Larx0517

さよなら、ぼくのモンスターのLarx0517のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

原題”Closet Monster”は、
Closet Gay「隠れゲイ」と
リンクするのだろう。

“クローゼット・モンスター”
オスカーのトラウマの比喩。
幼い頃に見た暴行現場が原因。

個人的に、14世紀、イギリス国王エドワード2世を思い出させる。
彼はゲイであり、妻である王妃イザベラのクーデターにより退位させられる。
肛門に焼け火箸を入れられる拷問を受け、死亡。

今作の監督、脚本ステファン・ダンは、ゲイを公言している。
主演コナー・ジェサップも今作の後にカミングアウトしている。

そういった意味でも、今作はダン監督の自伝的で、かなり内省的な内容になっているのだろう。

それだけに現実と空想が入り混じった、独特な世界観を作り上げている。
たくさんのメタファー(比喩)が散りばめられている。

音楽も、その世界観を際立たせている。

自然にハムスターが話す。
声は女優イザベラ・ロッセリーニ。
トランスジェンダーを匂わせる。
「ジェンダーがこんがらがったみたい」
しかも、自分が5代目のハムスターだと、最後の最後にさらっと言う。
それを交換したのは、両親。
つまり父も手を貸していた。
それがオスカーには聞こえない。

「クローゼット」に、オスカーは父を蹴り入れる。

父親は2度「オカマ」という言葉を使う。
日本語字幕では、オカマとひとくくりに翻訳されている。
実際は別の単語が使われている。

31:00「母さんはオカマとデートか?」
最初は”queer “。
この単語は、以前は差別的なニュアンスがあった。
しかし現在(今作公開時)は、中立的な意味合いで使われる。
彼女の前というのもあるだろう。

52:39「オカマの集まりに行くな」
2度目は”faggy”。
これは明らかに差別用語。
オスカーのセクシャリティがわかった上で、侮蔑する言葉を使う。
これでオスカーは父をクローゼットに蹴り入れる。

これは何を意味するのか?

「愛する人が 父さんから離れる理由が分かる?」

それでもラストに思い出すのは、父親。

「愛してる お前は俺の誇りだ」

これがオスカーの「夢」。

父親とゲイの息子。
多分世界中のゲイの夢でもあるだろう。

その夢が現実になる日は来るのだろうか。
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