イチロヲ

河内カルメンのイチロヲのレビュー・感想・評価

河内カルメン(1966年製作の映画)
4.0
農村部の貧困家庭で育てられ、強姦被害の衝撃を抱えている女性(野川由美子)が、真の愛情を追い求めながら、単身大阪へと出立する。今東光の同名小説を原作に取っている、ウーマンリブ系の人情喜劇。

本作の主人公は、貪欲に愛情を模索し続ける女性(=性に奔放な女性)として登場。自らの体を資本にしなければならない境遇からの「脱出不能状態」と「心と体の乖離状態」をキーワードに、性のアドベンチャーが繰り広げられる。

何よりも、性愛の多様性を先鋭的に盛り込みながら、あっけらかんとしたセックス観念を語っていくところが面白い。主人公と接触する男性陣では、同棲相手の中年男(大辻伺郎)が個性的であり、互いに譲歩しながら、別れるための芝居を打つ場面が白眉となる。

クライマックスでは、脱出不能状態を実感した主人公が、雲散霧消の境地へと昇華。一人の女性の敗北と旅立ちに着地させていく。「もしも、鈴木清順が日活ロマンポルノに参加していたら」の「if」をイメージすると趣が増す。
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