あおい

未来よ こんにちはのあおいのレビュー・感想・評価

未来よ こんにちは(2016年製作の映画)
4.5
イザベルユペール演じるナタリーの生き抜く姿に焦点が当てられているように感じられた。
学生運動、夫の浮気・別居、母親の死、かつての教え子の成長・変貌、など物語的に時間を使える(使いがち)な場面も多くあるが(ナタリーの波乱な人生ドラマに焦点が当てられているのかと思いきや)、劇的に語らないかつ映像では語らずにカットされ、ナタリーが過ごしている時間感覚を見事に表現していた。また、ナタリーの慌しさの表現だけでなく、少ないカットでこちらにわかるように語ってしまう器用さも感じた。その例として、ラスト間際のファビアンとのロマンスがあるのか!?ギリギリのところでカットし、帰宅の車内に移り変わり音楽で語ってしまうというのがあった。
さらに、忙しい中にも欠かさずに哲学書を読んでいるナタリーの姿が挿入されており、慌しさとは対照的の自己内省の場面を入れることで、彼女は常に考えて行動していることが終始見えてきたし、また考えて行動することの難しさ、上手くいかないもどかしさみたいなのも感じた。(ナタリーが学生に"自分で考える"ということをテーマに授業をしている。
女性に焦点を当てていること、上手くいかない人生、など、エリックロメールを思い出させた。

母親の死の後、孫が誕生し、死から生へとぐるぐる回るような人生の構造を感じさせられる。また、その構造の中でナタリーの日常は続くと言わんばかりのラスト(ナタリーが孫を抱きかかえ小さい声で歌を口ずさむクリスマスの夜)には誰もが素敵と心を奪われるだろうよ。
あおい

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