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未来よ こんにちはの62355cinema5のレビュー・感想・評価

未来よ こんにちは(2016年製作の映画)
3.6
60歳を超えても、現役バリバリの大女優 イザベラ・ユペールが、描いてみせる第二の人生の過ごし方。
人生の転機を迎えた中高年に対する応援歌。
若い頃に観たら分からなかっただろうなぁ。

哲学を教える高校教師ナタリー、二人の子供は巣立ち、夫と二人暮らしをしている。
母親の介護に追われながらも、教科書の執筆など仕事もこなす彼女だったが、夫から別れ話を切り出されたり、映画館で見知らぬ男からストーカーまがいの事をされたりで散々な目にあう。
そして突然訪れる母の死。
また、教科書の執筆も軌道修正を余儀なくされる。
彼女の未来には、何が待っているのか?

人生には、「まさか」という坂があると言うが、突然まさかの「おひとり様」になり戸惑いをやや隠せないナタリー。

しかし、ナタリーは冷静になって、前に進んで行く。
彼女は、「年寄りに急進主義は無理」と言いつつ、元教え子のイケメン君が主催する勉強会に出席したりして、新たな自分を発見しようとする(ナタリーは彼に対して密かな想いを寄せていたのだろうか?)。

元夫が20年間聴き続けたブラームスとシューマンから解き放たれ、急進的なフォークシンガー(ウディ・ガスリー)に関心を示すのも その暗示。
また、動物(猫)を巧みに小道具として使い、本能(自我)の目覚めが表現されているのも上手い。

子育てを終えた世代が熟年離婚をしたり、親の介護に明け暮れるのはよくあること。
そうした誰にでも起こる日常のいざこざにメゲないナタリーの姿に、共感している自分に気づきます。
第二の人生を如何に過ごすべきか、その答えのヒントが隠されているように思いました。

そして終盤で、ナタリーがするルソーの朗読がすばらしい。
「手に入れたものより期待するもののほうが楽しく、幸福になる前だけが幸福なのです」

とりあえず、私もこれまでの自分の人生を振り返ってみよう。

※「アンチェインド・メロディ」の旋律も心に残りました。
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