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未来よ こんにちはのooospemのレビュー・感想・評価

未来よ こんにちは(2016年製作の映画)
4.4
ユペール様が哲学教師。ごく個人的な感想だけど、ある程度図太くないと務まらないよ、哲学を講じる、って。格好良い。私はいちいち感傷的になってしまうので絶対無理だ。まあそんなことはさて置いて。
教師の日常というありそうであまり観ない構図が心地良かった。ホセ・ルイス・ゲリン《ミューズ・アカデミー》を想起したけれど、今作の場合は語り手(監督)がとても女性的で、包み込まれるような温かな視点を感じられるものだった(実際に女性だし)。それぞれのライフワークをこなしつつ、プライベートの日常も情緒豊かに刻まれていく。当たり前にいた身近な人間の喪失、生活の変化、少しずつ変わっていく人生を受け入れる主人公のように、語り手もまた淡々と運命の定めを物語る。そして行き着くところは〈孤独〉だろうか。それも「寂しい、辛い」というネガティヴな感触でなく、ただそこにある「孤独」。そういうものだ、という。私たちは尊敬し合う周囲の人間たちに支えられる一方で、結婚してもしなくても、いつどこにいても、一人の人生であるということを噛み締めて生きるのである。それを知ったからこそ、周りをもっと愛することができる。この強さがユペール様にぴったりだ。
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