ただのオシャレ映画ではなく、ファッションを美術的・学術的・歴史的に捉えた映画。
2015年のメット・ガラのレッドカーペットを彩ったセレブ達のドレスについては、既に雑誌やネットの写真で見ていた。
しかしメトロポリタン美術館内部のドレス展示については何も知らなかったので、今作の内容は非常に興味深いものだった。
この年のテーマは「鏡の中の中国」ということで、アート的要素だけではなく、思想的にも配慮しなければならない中、美術館の服飾部門キュレーターであるアンドリューが奔走する姿をメインに描かれている。
そして久々にVOGUE編集長アナ・ウィンターのお目見えだ。
『ファッションが教えてくれること』や『VOGUE ファッション誌、モードへの昇華』で見せた辣腕ぶりは健在。
『ファッションが〜』にも登場していたVOGUE編集部メンバーも何人か写っていた。
まだこの時は存命中だった、写真家ビル・カニンガムの姿を観られたのも嬉しかったです。
伝説的なデザイナー達の作品の数々を観られると同時に、ファッション界のアカデミー賞であるMET Galaの裏側まで覗ける作品になっていたので、ファッション好きな人にとってはかなり見応えがあると思う。
ただ、大半は美術館側の大掛かりな展示準備ドキュメンタリーなので、ファッション好きといっても「たくさんオシャレな洋服を観たい!」と期待する人には少々物足りないかもしれない。
だが、これを機会にアート的観念でファッションを捉えてみるのも良いかもしれません。