TaiRa

透明人間のTaiRaのレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
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ユニバーサル・ホラーがようやく再開発に成功したので良かった。

『透明人間』を被害者女性の視点に全振りして描く、というありそうでなかった解釈が良かった。『ガス燈』や40年代ヒッチコック作品的なヤバい夫系のサスペンスにポランスキー的なニューロティック・ホラー、「死んだはずの人間」がそこにいる恐怖、何もない空間に恐怖を覚えるJホラー感など、色々詰め込んだ前半。そこにエリザベス・モスを持って来るのも良かった。見ていて不安にさせる弱さと同時に強さも感じさせる。上手い俳優じゃないと成立しない。『ハンドメイズ・テイル』の主演である事も重要な要素。どうしようもない状況に追い込まれてからの後半戦は、段階を踏んで逆襲に向かって行く。前半ホラー、後半逆襲という構成は『デス・プルーフ』を想起する。タランティーノも好きな『女囚さそり』な女ハードボイルド感も最後には身にまとう。「透明」の視覚化に関しては過去作品にも見られたアイディアでしかなく、斬新さはなかったが、姿は見えないがそこにいる表現はカメラワーク含め総じて気味悪い。透明人間とセットで語られがちな下世話な話題を、ハッキリと「性暴力」として提示したのも新しいし、それが分かった瞬間が一番恐ろしい。光学迷彩スーツのデザイン、存在を示唆する音がまた良い。盗撮や窃視の暴力性。音だけ聞くと虫の様にも聞こえるのがまたキモい。ラストにドヤ感が滲みがちなリー・ワネルの癖が上手く物語に溶け込んでいて良かった。
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