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T2 トレインスポッティングのMrMINEのレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
4.7
20年前のあの4人をはじめ、あの監督たちが結集して続編が作られた。

20年後のいま、当時主演を務めたユアン・マクレガーは大スターになり、ダニー・ボイル監督はアカデミー賞監督にまで上り詰めている。

1996年公開の「トレインスポッティング」。当時のポップカルチャーを斬新な映像、カット割、音楽で見せた衝撃作。もう何でもやりたい放題な破天荒な演出に対して、脚本の一言一句はとても新鮮だった。
どうしようもない若者たちの物語。だらし無さをここまで表現できることはみている我々にとって、とても爽快だった。
まさに〝映画〟という文化、表現、娯楽を最大限に生かした映画らしい映画である。

それから20年経った現代。どんな自由人も、荒くれ者も能天気ボーイもいずれ平等に年を取る。
時間の経過、ある意味ではとてつもなく切なくて、神秘的。未来へ行ったというSF物語かのように、20年という歳月の流れは何とも信じがたい真実=イマだ。
僕の20年前。まだ小学生になったばかり、それが今や20代半ば。
一作目が公開された頃はまだ「ハリポタ」の一巻も刊行されていないし、労働党ブレア政権も誕生する前だ。
それだけに〝20年前〟は想像できなかった未来がいまやって来ている。

20年も経っての続編となれば、全員が揃うなんてことはそうそうない。でも奇跡的にこの作品は、物語の人物たちでは考えられないほどに俳優陣が軌道に乗って成功をつかんでいる。
それだけに説得力のある見て損のない、見事な20年後の物語として仕上がっていた。
売れっ子となった4人のスケジュール調整が大変だったと語るボイル監督。期待を裏切らない一作目と変わらない演出にただただ脱帽!

1作目のような斬新な映像表現、編集、そして音楽。いいとこだけ踏襲していて、その上21世紀の科学的映像表現も使われている。
まさに現代のポップカルチャー。

麻薬に溺れていた青年レントン。大切な仲間たちを裏切って大金を持ち逃げした彼が地元に帰ってきたところから物語ははじまる。
だらしのない若者だった彼も、年齢を重ねるとともに貫禄がでてきた。でも性根は昔と変わらず。それでもセリフのひとつひとつに重みがあった。
ネット社会と化した現代、みな何らかの中毒者だと語るレントン。
風刺的且つメッセージ性の強い場面でもある〝CHOOSE〟を連呼するユアン・マグレガー演じるレントンの終盤のシーンが一作目を彷彿とさせ、忘れらない。
象徴的な音楽と共にあのセリフの言い回しは胸に焼き付いた。


どれだけ悪いことをしてきても、どれだけ破天荒に生きてきても、どれだけルーズに過ごしてきても、20年前の思い出を語ることのできる仲間って素晴らしいなと、純粋に思えた20年後の続編だった。

人間って年を重ねると、発言に箔がでてくるのか、1作目には抱かなかった感動がこの続編にはあった。

汚いトイレ、クラブで踊り狂う人々、マイクに付けられた小型カメラ、車から滑り落ちるレントン等々、新旧問わない多彩な映像表現と音楽に改めて感銘をうけた。
おまけにセリフの深みもあって、まさに映像表現のバイブル的作品。

歳月の流れを生かしきった〝未来〟を重点においた青春を生きた男たちの朱夏の物語。1作目をきっちり理解してから見ることをオススメする。


P.S.男を誘惑してたクラブ通いの女子高生が、弁護士として立派な女性になっていたのが何とも微笑ましい瞬間だった。
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