どらどら

愚行録のどらどらのレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
4.8
-みんな愚かで空っぽなのに

震えが止まらない
日常が静かに、破壊される

バスで隣に座る人も
同級生も同僚も
何より自分自身をさえも
僕たちは何も知らないのかもしれない

恨みも嫉妬も怒りも
恋愛も野心も友情も
優しさも殺意でさえも

“悪魔”のものではなく
隣の誰かの、そして自分のものなのだ

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貫井徳郎×石川慶×妻夫木聡×満島ひかり
ひたすらに怖ろしく、ポスター通り仕掛けられる三度の衝撃に自分の中での「人間への信頼」みたいなものが完全に破壊された

第一に石川慶監督
「蜜蜂と遠雷」で衝撃を受け、「イノセント•デイズ」での丁寧な演出に引き込まれた。時系列的にはこれらの前に撮られた作品だが、やはり石川監督にしか撮れない映像だと思った。バスのリフレインなどは、劇伴も含めて見事だった。
初めから間違いなく、引き込まれる

第二に俳優陣
満島ひかりと妻夫木聡といえば「悪人」だし、あれが僕の映画にハマったきっかけの一つなので、この組み合わせは個人的に激アツだった
妻夫木聡は”受けの主演”でも他の人のいいところを引き出す好演だなぁと思っていたら、それさえも仕掛けだったという衝撃。あの二面性を出せるのは妻夫木聡だけだ。
満島ひかりは完全に「満島ひかり劇場」といってもいいくらいの迫力。独白のシーンは下手なホラーの数千倍怖い。そして自分の中にいる彼女を感じる。いつまで日本映画は彼女という才能を干すんだろうか。
中村倫也、臼田あさ美と言った個人的に推しの俳優陣もやはり見事な存在感。作品世界を重層的にしている。
小出恵介の不気味さもいい

第三に貫井徳郎さんの原作
「微笑む人」とも共通して、人間なんてわからないものだというある種の諦めと逆説的な愛を感じる。見事なストーリー構成だと思う。

全てのヒューマニズムを嘲笑うかのような、チャレンジングな作品だ
どらどら

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