TaiRa

オールド・ジョイのTaiRaのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
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「あの頃」と変わらない俺たち、を取り繕ってみるけれど、俺たちどうしようもなく未来へ来てしまった。

もうすぐ父親になる男は、その自覚が芽生えたからこそ逃げ出したくなってしまう。妻はとっくに逃げ出せないのに。親友は家庭を持たず生きて来た。自らの意志で責任から遠ざかったんだと、自分に言い聞かせても寂しさを誤魔化す事が出来ない。出来る事ならずっとあの時のままでいたかったけど、それぞれ人生を進めてしまって、その進め方が正しかったのかも分からない。別々の選択をして来た男たちはまるで最後の思い出を作るように森を目指す。古い付き合いの友達と会えば、途端に「あの頃」に戻るけど、会話の端々にもう「あの頃」とは違うんだと分かって切なくなってしまう。親友と恋人の違いはさほど無い。友情と愛情も。男二人の間に流れる不思議なニュアンスを最小限のディティールで示していく。「ムード」とはこう描くのだ。棒が好きな犬が可愛い。まるで子供みたい。どちらがより犬を可愛がっていたか。「大丈夫。悲しみは使い古した喜びだから」それなら、この古き友は何だろう。夜の街を不安げに彷徨う彼の姿、見せ方がカサヴェテスみたい。ライカート流の『ハズバンズ』だったのかな。
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