ロッツォ國友

彼らが本気で編むときは、のロッツォ國友のレビュー・感想・評価

彼らが本気で編むときは、(2017年製作の映画)
4.7
愛想の悪い女子小学生が生田斗真の200ccのおっぱいを揉むお話。
ちょっとだけ、硬い。

1日違いで公開のラ・ラ・ランドを満員の劇場で観終わったその10分後に観たんだけど、コチラは席に20人居るか居ないかという感じ。快適だったけど、この差は何なのだろう…


内容の割にはそこそこ宣伝もされているが、男性とトランスジェンダーの女性パートナーの元に子どもが居候するという、デリケート街道一直線なストーリーがまず凄い。
人物の構成要素から言うと、ちょい前の傑作「チョコレートドーナツ」に非常に良く似た構造をしているが、そこから法的バトル要素を抜いて生活感を強めた印象。


社会的少数派であることから立場が弱く、理解を得られない人々。
トランスジェンダーは、肉体的な性自認と精神的な性自認が一致しない状態を指し、性同一性障害とも呼ばれていた。
ゲイやレズビアンに近くはあるが捉え方がやや異なるイメージだ。

そのトランスジェンダーの女性と男性パートナーがメインで語られるワケだから、映画のネタとしてはそれだけでもいいくらいだが、本作はそれ一本に終始させず、主人公の女の子がネグレクト(育児放棄)によって心の傷を負っていたり、同級生が同性愛に苦しんでいたりと、別件が挿入されまくる。
だが輻輳した乱雑な印象は一切なく、むしろそれは後に共鳴し物語を加速させてゆく。


くだんのカップルと主人公少女のデコボコチームも、いつしか本物の家族のようになっていく。どころか理想中の理想の家族になっていく。
女装した男と男のカップルというのも、最初観た時は奇妙な光景に見えたが、後半に行くともう大好きな風景になるし、ずっと見ていたくなる。
こんなにも愛らしい家族がいるだろうか?


性的少数派を扱うテーマ上避けては通れない「異常って何?じゃあ、普通って何?」という問いももちろん盛り込まれており、心にグサリと刺さる。
普通に生きてるだけなのに、社会が用意した二つの性と追随するイメージ・偏見。その枠にはめられ苦しみ悶える姿が何よりも痛ましい。

同時に、痛ましいながらもひたむきに強く生きるその姿に憧れるし、何より美しいと思った。


「チョコレートドーナツ」は社会的な切り口からの表現だったが、こちらは人として生きていく日々から性を捉え直している。
優しく温かく、エグさを抑えた作りでありながら、そこに乗せられた意味は深く、重い。


非常にデリケートなテーマをあれこれ入れていながら安易なものにならず、されども重くなりすぎず、力加減がとても良い。
声だして笑う場面があり、涙が滲む場面もあり、本当に素晴らしかった!

アレを実行する時のソレで一回「スイミー」ネタを入れるあのシーンなんかマジで鳥肌が立った。
よくこんなの思いつくな。よくこんな辛い心情を美しく描けるな。


大好きなシーンを挙げ始めればキリがない程、本当に夢中で観ていられる作品だった!
まぁ老若男女が熱狂するほど大ヒットするようなジャンルじゃないのは分かるけど、もうちょっと流行ってほしい!w
ロッツォ國友

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