ボブおじさん

エル ELLEのボブおじさんのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
3.7
映画はいきなり始まっていた。主人公のミシェル(イザベル・ユーペル)は、自宅に押し入ってきた覆面の男に暴行される。その後、彼女は部屋の片付けをし、風呂に入り、電話をかける。だが連絡先は警察ではなく寿司の出前だ。

冒頭から「ELLE=彼女」の行動に強い違和感を感じるが、この違和感は最後まで続く。果たして彼女の考えに共感できた人は、どれほどいたのだろう?
フランスでは彼女の考え方は受け入れられたのだろうか?

彼女は決して悲劇のヒロインにはならない。仕事でも私生活でも恋愛でも、常に主導権を持っているのは彼女だ。暴行をした男に対しても単なる被害者にはなろうとしない。

10歳の時の壮絶な体験が、彼女の生き方に大きな影響を与えたことは間違いない。彼女は周りの声を聞かず、警察や周りに頼らず自分の力で生きてきたのだろう。車を停めたければ自分で場所を作ってしまう。同僚の夫を寝取っても悪びれない。近くにいたら、あまり関わりたくない人だ。

母であり娘でありゲーム企業の敏腕CEOでもあるミシェルは、設定としては49歳で孫もいるが、大人の女性としてセクシャルな生活も続けている。

周囲からの差別や嫌がらせ、そして暴行にも屈せず、年齢・性別から抱く既成概念をことごとく裏切るような彼女の姿は、未来の女性の新しい生き方なのか。それともただの変わり者か?

警察に頼らぬ犯人探しというサスペンスの形を取りながら、性の被害者であることを拒否する女性を描いたこの作品。。撮影当時監督のポール・ヴァーホーヴェン78歳。ヒロインのイザベル・ユーペル63歳というから驚きだ。