チーズマン

エル ELLEのチーズマンのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
3.9
めちゃくちゃ刺激的で面白いんだけど、観客側を非常に困らせてくれる映画でした。

ポール・ヴァーホーベン監督。
フランス、ベルギー、ドイツ製作映画とのこと。

サスペンス、一応犯人探しというストーリーはあるのですが、それがどういう結末に向かっていくのかよく分からない。なのにとにかく引き込まれていくので、これはやはり監督の手腕がすごいなと。

主人公であるミシェルという女性、製作段階ではニコール・キッドマン初め様々な女優が候補に上がっていたようですが、観終わった後はイザベル・ユペール以外は考えられないぐらいハマっていました。
素晴らしい演技でした。

ここまであらゆる意味で自立した女性像が描かれる映画もなかなかないんじゃないか、そしてレイプの被害者の側の映画としてもちょっと観たことないタイプの作品だと思います。

フランスだけあって、この映画では色々な恋愛や愛が描かれていましたが、その中にいわゆる一般的な普通の愛の形というのは1つもなかったぐらいに感じました。
人と人の間に生まれる気持ち、愛そのものには決まった形はないですからね。


もちろんこの映画はあくまでヴァーホーベンの挑戦でもあるので、決して皆こうあるべきだと言っている訳ではないことは百も承知ですが、はたしてここまで恋愛に対して自立しなければいけないのだろうか?愛の形を作る枠は確かに窮屈でもあるけど、枠に寄りかかることで安定できる関係もあるように思います。仮にその全がとっぱらわれた時、それを自由に謳歌できる人達がはたしてそれほどいるだろうか 、と日本人の感性で考えてしまう。

男達がもう…、最初のショッキングなレイプシーンはまだまだ“男の方が上だ感”を1番極端に象徴したようなシーンに個人的には見えました。
そして物語が進むにつれてその“男方が上だ感”がどうなっていくのか、そしてラストはどう終わり最終的にこの映画で唯一女性とパートナーになれた男は結局どういう男性だったのか。
観終わったら、「男どもがいつまでも今までのような感覚でいたら、いざ愛の形を作ってた枠が取っ払われた時に男の居場所なんてないから」と言われてるような気がしてとても困りました。

それでもこのミシェルという女性が魅力的でカッコよく見えてしまうのでまたもや困るんです。笑

困るといえば、予期せぬ場面でいきなりブラックなユーモアをかましてくるので、笑いを堪えるのが大変だった。
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