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オクジャ okjaのりのレビュー・感想・評価

オクジャ okja(2017年製作の映画)
3.6
遺伝子組み換え、生命の尊厳に対して重くなりすぎない程度に問題提起した作品で、
オクジャという食用豚を創り肉へ加工する企業と、動物保護団体の戦いの物語だ。
物語は韓国の山奥で少女とオクジャが戯れるシーンから始まる。この自然溢れる世界観が好みだ。暮らしたい。やがて、オクジャが成長すると共に企業へ引き取られることとなる。しかし、少女はオクジャへの想いからちょっと常人離れした力を発揮しつつ連れ返しに行くのだ。
このような流れであり、鑑賞しながら遺伝子組み換えの是非や生命の尊厳について考えざるを得なかった。そもそもこのような倫理的な問題は自然界を乱してはいけないという考えから発せられる問いであるが、それは人間の思い込みに過ぎないのではないか、人間という種の存続のための手段ではないのかといった問題の前提について考えた。たしかに、自然界を乱すなという言説は地球が人間のためだけの住処ではないからもっともである。しかし現状、人は環境を破壊し他種の生命を奪っている。このどうにも出来ない二重性が問題を難解にしている。究極的な改善策はないが向き合っていかなければならない諸問題だ。
加えて生命の尊厳であるが、近代社会は死から隔離されている。特に屠殺に関しては生命を奪っている以上知らなければならない事実であるが、それは社会の周辺に追いやられている。私自身屠殺の現場は見たことはないが、公開している場所もあるそうだから死ぬまでには行かなければならない。それが人間という種であるからには義務であるように思える。
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