oucky

しゃぼん玉のouckyのレビュー・感想・評価

しゃぼん玉(2016年製作の映画)
4.5
最近、多少お金がかかった大作志向作品を多く見て来ました。本作は、最高の役者と台本、最高の風景があれば、いい映画が作れる。そんなお手本みたいな作品でした。

僕的に本作の鍵は、映像美なのではと思う。宮崎の田舎の原風景を丁寧に切り取ったロングショットを始め、オープニングシーンの高架下の映像などは秀一だと思います。
それだけで観てる人の心に何かズシンと響くものがあります。

そして、ドラマ。非常に単純で観易い内容。シンプルに訴えかける人情。そして、事件を犯した男の後悔の念と再生へのプロセス。環境によって人間っていい方にも変わるし、悪い方にも変われる。もしかしたら本当に悪い人間なんて何処にも居なくて、その人が生きた生い立ちにより心が荒んでいくのかも知れないと思わせます。原作は直木賞作家「乃南アサ」シンプルな中にも深みがあるのは、原作のお陰でもあるでしょう。

次に、キャストの芝居。とにかく無骨な青年を演じる林遣都くんが素晴らしい!尖ったナイフのような男が、人の優しさに触れていき人間性を取り戻す様は、最小限のセリフで表現されます。その林遣都くんの表情、無骨な喋り方はため息が出ます。また、おばぁちゃんの市原悦子さんもそりゃ最高でしょう!喋り方、仕草、もう惚れ惚れしてしまいます。
二人の芝居に涙が止まりませんでした。また、脇を固める役者たちも素晴らしい!

最後に監督の演出。この東監督、TVドラマなどを主に撮られているそうですが、ぶっちゃけ知らなかったです。ただ、この世界観を作り上げるには並々ならぬ努力が必要だったのではないでしょうか?この映画が普通の映画のバジェットより低予算で製作されている事は分かりますが、その分をスタッフやキャストの頑張りで補っていたようにも思えます。映画を作り上げる事への情念が伺えるような作品だったのではないでしょうか。
oucky

oucky