Omizu

ティエリー・トグルドーの憂鬱のOmizuのレビュー・感想・評価

4.5
【第68回カンヌ映画祭 男優賞】
『女の一生』ステファヌ・ブリゼ監督作品。カンヌ映画祭コンペに出品され、男優賞(ヴァンサン・ランドン)、エキュメニカル審査員賞特別表彰を受けた。セザール賞では作品賞にノミネートされ、男優賞を受賞した。

これは傑作。ステファヌ・ブリゼ監督作品は初だが、ドライな演出、真綿で首を絞められるようなリアリティと見事な演出手腕に舌を巻いた。

解雇された男が再就職先としてスーパーの警備の職につくが…という人間ドラマ。男が資本主義社会の残酷な仕組みに組み込まれていく様を巧みに描いている。

ヴァンサン・ランドンの演技がマジで素晴らしい。地味で無愛想な役なんだけど、この上ないリアリティがある。カンヌ映画祭男優賞も納得の名演。これだ!と見せつけることのない自然な演技。終始ティエリー・トグルドーにしか見えない。

監視カメラで客や従業員を監視し、ときには従業員の不正を告発しなければならない。スーパーで働くのだが、無機質な裏方しか最後まで出てこない。まさしく牢獄に閉じ込められたような閉塞感がある。

どんなヒドい世の中であろうと順応するしか生きる道がない。そんな絶望をリアリティたっぷりに描き出している。傑作。
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