MasaichiYaguchi

ハートビートのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ハートビート(2016年製作の映画)
3.9
この作品は、全編、ダンス、ダンス、ダンスと、心沸き立つ音楽で溢れている。
プロのバレエダンサーを目指し、奨学金を得てニューヨークの芸術学校にやって来たヒロイン・ルビー・アダムス、同様にプロのバイオリニストを夢見てイギリスからやって来た青年ジョニー・ブラックウェル、この2人を中心に物語が展開していく。
プロのダンサーを目指す若者を描いた映画というと「フラッシュダンス」が、ノリの良い音楽とダンス一杯の青春物というと「サタデー・ナイト・フィーバー」が思い浮かぶが、この作品もこれらの映画に連なるものだと思う。
本作では新旧二つのもの、バレエやクラシック音楽と今風のヒップホップダンス&ミュージック、これら対照的な両者を対峙させるのではなく、共存、融合させていてユニークだ。
一つの作品でそうすることにより、バレエやバイオリン楽曲に馴染のない若者でも、これらの魅力がすんなり伝わって来ると思う。
ルビー役のキーナン・カンパや、その親友ジャジー役のソノヤ・ミズノは、名門バレエ団や学校の出身なので、映画で披露するバレエの美しさにウットリしてしまう。
そして主人公たちに絡む“スイッチ・ステップス”というヒップホップダンスチームによるキレッキレッのダンスには心も躍りだす。
そして音楽、特にジョニーの超絶テクによるバイオリン演奏には痺れてしまう。
ジョニー役のニコラス・ガリツィンはミュージシャンなので、吹替えなしで演奏しているのかもしれないが、仮に演技だとしてもその熱量や迫力に圧倒される。
アーティストは自分の腕を磨いて表現力を高め、孤高の存在を目指したりするが、本作で描かれたように、多くの人々の支持を得る音楽やダンスは、世界と繋がって人々と分かち合うものだと思う。
終盤の展開は予定調和的ではあるが、希望を感じさせ、爽やかな後味を残します。