スローターハウス154

マンチェスター・バイ・ザ・シーのスローターハウス154のレビュー・感想・評価

4.2
2017/8/25

高評価だったので内容知らないままで観に行った。
観始めて20分経ったくらいで「あ〜コレは後からジワジワくる系だ...」という予感が。実際、観終わった今はまだ感覚がフワフワしてる。

「悲しい」と知覚できないほどの悲しみ。それを乗り越えなくていい、成す術もなくそっとしておくしかない..という、すごく現実的なのに優しくて繊細な映画だった。

寡黙に悲しみの堂々巡りをしているという点においては、村上春樹の登場人物達にややリンクしてるかもと思った。「過去」と割り切れず"あの時"に囚われて呆然としたまんま。受け入れきれなくて涙すら流せない。どんな言葉も慰めにならない。死ぬ以外には平静を装って生きるしかない。...これは生き地獄だなぁ。

主役、ベンアフみある俳優だな、と思ったら弟なのか!どーりで似てるわ。
寡黙で気怠げで無愛想で口汚い..というスれたキャラが、緩慢なストーリー運びの良いスパイスになっていた。
(こういう気怠げで無愛想なキャラめっちゃ好きだ。弟アフの声のかすれ具合も良い!)

意地でも自分の心情は外に出したくないから周囲に対して粗野になる..こういうキャラじゃなきゃ、この映画たぶん寝てたかもな〜。
僕もどうしようもない悲しみに対して感情をどう処理していいかわからないタイプだと思うので。人前で弱みを見せたくないから泣けない、という気持ちはわかってるつもり。