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ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命のsobayuのレビュー・感想・評価

4.0
ナチ映画タイトルダサくされる法則。しかしナチズムに翻弄される市井の人を描く映画に外れなしの法則というのもありまして、今作もとても面白かった。

先日来日したクストリッツアが「現代人は人が死ぬ映像には不感だが、それが動物となると心を乱す」と言ってたのを思い出した。ポーランド侵攻、ワルシャワ蜂起、学校で習ったのに字面でしか捉えてなかった。直接的な残酷描写はほぼないし、恐らく実際よりかなりソフトに描いてると思うのだけど、それでも圧倒的に怖い。素敵な動物園から徒歩圏内に出来たゲットー、壁一枚隔てたその向こうを俯瞰で撮ったショットとか、カメラマンの腕の見せ所だったんだろうなあ。すごく印象的だった。

コルチャック先生が子供と一緒に絶滅収容所行きの貨物車に乗り込むシーン、もう嗚咽を堪えて歯を食いしばるくらい悲しい。何にも分からず次々抱っこをせがむ子供たち。その貨物車に乗せる意味を分かってるだろうヤンの心中は察して余りある‥そりゃその後でアントニーナを責めもしちゃうよ。

民族全て死に絶えろという究極の悪意の中で育った子供たちが、知らない大人を警戒せず両手を上げて“抱っこして”のポーズを取るというのが、じわじわと何とも言えず辛い。あんな状況なのにライフイズビューティフルを必死になってやってた大人たちが実際に居たんだなあ。

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ナチものに出るダニエルブリュールっていつも一筋縄じゃいかない役をやる。今回も“でもこの人だってこの時代に生まれなければ”と思わせたり“いやこういう人の研究が結局ヒトラーの優生思想に理屈をつけて補強したんだ”と背筋を凍らせたり。昼顔的には軍服がはじけ飛びそうなムッチリ我儘ボディ・ブリュールなのが、生々しくてちょっとキモくてエロかったですね。最後に最低な感想を書いて終わる。
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