脳内金魚

ウインド・リバーの脳内金魚のネタバレレビュー・内容・結末

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ジェレミー・レナー出演作制覇中


MMIW(先住民女性や少女の失踪・殺人事件を認知させるための運動)と言うものを知らなければ、恐らく派手さもないつまらない作品と見られてしまうのだろう。だが、ウィンド・リバーは正に音すら吸収される雪だけの世界のような、すごく淡々と進むのだけれど、だからこそ各人の思いが胸に迫る。

雪しかない、女も楽しみもない土地ウインド・リバーでは、正に先住民女性は「狩られる」存在なのだろう。コリーが語る「雪と静寂以外を奪われた」と言う言葉は、これ以上彼らから自分から何を奪えば気が済むのかと言う静かな怒りなのかもしれない。
裁く立場の人間ではない。知っているのは、ウインド・リバーではどう生きるのかだけだ。だからコリーは犯人を自分やナタリーと同じ舞台に引っ張り込んだ。人間の法で裁きはしないが、ここの流儀で生き延びたのなら、お前は「強者(勝者)」だと。これがコリーなりのケリの付け方であり、ナタリーへの弔いなのだろう。
その後、コリーはジェーンに「不運だから狩られるんじゃない、弱いからだ」と語る。一体どんな気持ちで言ったのだろう。それは、自分の娘が「弱かった」と言ってるも同然だ。だが、自然の厳しさを説きつつも、ナタリーを「強い娘だ」と言うコリーは、獣とは異なる摂理の中で生きる人間のどうしようもない愚かさを知りつつも、誰よりも獣にはない人間の素晴らしさを信じたいのだと思うのだ。そして、自分の娘もきっとそうだったと信じたいのだ。

静謐なタッチでとても重厚なストーリーを描いてると思った。
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