カイ

ウインド・リバーのカイのネタバレレビュー・内容・結末

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

テイラー・シェリダンによるプロット、「フロンティア3部作」の最終作。「ボーダーライン」ではメキシコを、今作ではネイティブアメリカン自治区を描いている。「ボーダーライン」では3つの正義(個人、あるいは自警主義・国家・司法)の衝突を描き、ラストは「個人としての正義(自警主義)」に花を持たせる終わり方であったが、今作でもそのスタンスは変わらない。FBI捜査官・ジェーンが「司法」を表すならばハンター・コリーは「個人としての正義」の体現者である。奇しくも前作共に子を失くした親である。そして本作でもコリーがケリをつける。フロンティアとは歴史において常にはみ出し者が押し込められてきた場所である。今作のネイティブアメリカンも正にそれにあたる。司法が碌に機能していない場所にあって頼れるものは「個」しかない。たびたび「この地では運は頼れない」と繰り返される。鹿は不運などではなく、ただ弱かっただけだと。そこにあるのは果てしない諦観。そこから抜け出す強さが無ければ人は獣にも劣る。件の犯人が叫ぶ。「ここには女も娯楽もない」と。けれど女性と娯楽は等価なのだろうか?そんな怒りすらも圧倒的な諦観に塗りつぶされる。そして思い至る。どれだけ立派な倫理や道徳で着飾った仮面も、自分の弱さによって簡単に剥がれ落ち、獣に至ると。ラストシーンのナタリーが成し遂げたことを聞いたジェーンの涙にうなだれる。一番強かったのはナタリーだった。苦しめ。その時娘に会える。あまりにも辛いエンディングだった。
カイ

カイ