ブラックユーモアホフマン

ウインド・リバーのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.1
現代、雪原の西部劇。
さすがテイラー・シェリダンの脚本は安定して面白い。西部劇のフォーマットを借りながら、意識的に西部劇の男尊女卑・人種差別的な古臭く凝り固まった考えを逆転させることで、名作の風格を漂わせながら新鮮な作品にさせている。(だからこそエンドクレジットでワインスタインの名前が大きく出てしまうのが特に今となっては悔しいね。しょうがないけど。)さらにそこから死生観の話にも展開させ、あのワイオミングの雪原が象徴的でどこか民話的な舞台に感じられてくる。そこはやや薫陶的過ぎるかなと思ったけど、ちゃんと西部劇、犯罪サスペンスとして”アガる”シーンや緊迫感溢れるシーンも用意されているのであまり気にならない。構成も実は変わったことしてて面白い。
終盤の畳み掛けるような変則的な構成に興奮した。ちょっと『凶悪』も思い出した。
現代が舞台だから、銃などの装備が最新でカッコいい。風景は時代に取り残されたような古めかしい田舎なのに装備だけは新しいっていうのが良い。これは『ノーカントリー』にも似た感じかな。
たまにハッとさせられるカットがあって、あ、いいな、と思うんだけど、(エグい描写も逃げずにやってて。)全体的にはボヤッとした印象なのは、手持ちのカットが多いのとカッティングが細かすぎるせいだと思う。
これが監督デビューだけど変に気負った感じはない。元々監督もできる人だったんじゃないかな。逆に言うと、今までの脚本作品も監督に恵まれてたね。