つるみん

ウインド・リバーのつるみんのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.3
『ボーダーライン』や『最後の追跡』の脚本家だった事を観終わった後に知る。自分好みの映画な訳だ。『バウンド9』という彼にとって初となる監督作は未鑑賞だが、本作を見る限り監督としての才能は十分あると思う。何せ自分で脚本を書けるのが最大の強みであって今後どのような方針で映画業界に携わっていくのか分からないが期待が膨らむ。

『ボーダーライン』『最後の追跡』と合わせ、彼は徹底的にアメリカの闇の部分(もしくはグレーゾーン)を伝えようとしている。本作ではインディアン強制移住法により追いやられ、辿り着いた地〝ウインドリバー〟が舞台でネイティブアメリカンに焦点を当てた、今も尚続く悲劇的な題材を扱い、実際にあった事件を元に映画が作られている。

映画を見ていけば分かるが、その土地の天候や治安の悪さ。登場人物たちの1つ1つのセリフや行動がこの映画を観るに当たって本当に本当に大事な要素となる。

この土地に初めて足を踏み入れたFBIの新人女性捜査官(たった1人の新人だけを寄越すというのも現実)の視点は、我々からの視点と同じ立ち位置で学ぶことが多い。最終的に彼女はFBIとしての仕事、もしくはアメリカ人としてこの問題をどう受け取ったのかが描かれているのだが、そのシーンは涙が流れた。対して主人公コリー含め〝ウインドリバー〟に住む者たちの立場、それでも強く生きねばならぬと決心したように見えるジェレミーレナーの演技にまた涙。

そしてこの映画は、過去と厳しい現実を描くことだけでなくサスペンスとしても十分楽しめる作品であることは間違いない。雪の白と血の赤のコントラストの美しさや360°雪景色の中で被写体を追う手持ちカメラの臨場感。スムーズに時間軸を操っていたりと娯楽映画として観た場合でも十分見応えがある。

良い映画を観た。と心の底から言える。今年のベスト10に入ってくるかもしれない。
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