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ナンバー・ゼロのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ナンバー・ゼロ(1971年製作の映画)
4.0
ユスターシュのおばあちゃんが人生を語るドキュメンタリー。マシンガントークで始まり、最後まで聞く自信が萎えたんだけど、だんだんと話の内容に惹き付けられ、これだけの人生を生き抜いてきたことへの敬意しか感想がでないです。

若くに失明し、2つの戦争を生き抜き、早くに母を亡くし、年下の弟妹の母親代わりになり、ろくでもない夫があちこちで浮気騒ぎを起こし、父の介護を放棄した年上の後妻の代わりに脳梗塞の父の介護をし、自分の子供以外にも、フランス女性とドイツ人との間に(中絶ができず)生まれた虚弱な乳児を何人も引き受け(結果すぐに亡くなってしまう)保護したり埋葬し、夫は梅毒でおかしくなるがなんとか面倒見て…こんなに山しかない人生を笑いながら怒りながら、煙草吸いながら、バレンタイン飲みながら、マシンガントークでパワフルに語るおばあちゃん。凄いです。

事実は小説より奇なり、ドラマチック。これぞドキュメンタリーのおもしろさ。

「ぼくの小さな恋人たち」でユスターシユの分身が、田舎のおばあちゃんに育てられる時期が描かれていて、孫を全面的に肯定し受け入れてくれる。ユスターシュがいかにおばあちゃん子だったがわかります。

息子のボリスが助手していて、こんなに確かな土台があるにも関わらず、10年後に自死したユスターシュ。おばあちゃんの話から、昔の子供の死亡率の高さに驚きました。数えてないけど、10分の1くらいしか生き抜けない。死が身近だったのか、生は奇跡だったのか。おばあちゃんの生のパワーとユスターシュの力弱い声が対照的でした。
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