映画は遠い過去のはなし

田園に死すの映画は遠い過去のはなしのレビュー・感想・評価

田園に死す(1974年製作の映画)
4.0
◎恐山の麓、深い因習に縛られた田舎町。寺山自身の投影でもある主人公シンちゃんの母親の呪縛。隣の人妻への憧れ。駆け落ちの計画。変態サーカス団の奇行。
劇中劇の挿入から現在の自分と批評家との哲学的問答、母親殺しのパラドックスについて。
少年時代の「私」との対面。虚飾された過去。
人妻と共産党員の心中、父なし子の間引き。
現在の「私」と田園での語らい。
娼婦による強姦、童貞喪失。
東京新宿字恐山にて母と食事。

◎虚構の世界の中でさえ逃れることの出来ない母親の呪縛。
美化された過去と真実の過去。未来改変の失敗。

◎散りばめられた隠喩の数々
黒装束の集団、白塗りの人間達、壊れた掛け時計、赤い空と月と湖、変態サーカス団、空気女、川を流れるひな壇。

◎のっけからの唯ならぬ画力とJSシーザーの土着的で懐かしくも不気味な音楽が恐山の荒涼とした風景にマッチし過ぎていて(特にオープニングとエンディング最高。コレ、好きな人は癖になりそう)何かおぞましいものを見てしまった感覚を覚える。
終始、シュールで不条理な映像と寺山の独創的なイマジネーションの洪水。
劇作家故か、舞台空間を意識した配置や、ストーリー上全く関係のない人々や造形物が置かれたりするところは、シュールレアリズムの絵画を思わせる。
出てくる女性陣が皆、化け物のように怖い。