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ミラクル・ワールド/ブッシュマンのtakのレビュー・感想・評価

3.8
80年代育ちの僕ら世代は知らぬ者のない大ヒットコメディ「ブッシュマン」(1982年の興収1位)。主役を演じたニカウさんは、日本でも大人気となり、バラエティ番組にも幾度も登場していた。あの笑顔には癒されてしまう。ニカウさんはカラハリ砂漠に住むコイサン族。彼らは俗称で「ブッシュマン」と呼ばれる。自然と共存し、所有するという観念のない平和な生活。映画は、そんな彼らの村にセスナ機から落された1本のコーラ瓶から始まる大騒動を描く。

村に災いをもたらした悪しきものとして、コーラ瓶を地の果てに捨てに行くことになったニカウさんが、旅の途中で出会う文明社会の人々。政情不安なアフリカの地では内戦も起こっており、ニカウさんはいつしかテロリストが起こした事件にも巻き込まれてしまう。次々に起こる出来事を自然体で乗り切っていく姿に大笑い。でもエンドクレジットを眺めながら、しあわせって何なんだろうと考えている。便利なものに囲まれていることや、僕らが考える豊かな生活って、コイサン族から見たら奇怪なものかもしれない。

閑話休題。一部世代限定だと思うが、学校の体育館で体操座りして「砂漠の冒険」という映画を観たことはないだろうか。あれもジャミー・ユイス監督作。セスナ機が砂漠に墜落して投げ出された少年が、サソリや毒ヘビや獣に襲われながらも懸命に生き抜こうと頑張るお話だ。サソリに襲われるシーンがトラウマになったという方もおられるのでは。動物ドキュメンタリーの仕事でも知られており、自然の美しさと厳しさを深く知る監督なのだ。

ともかく本作はカルチャーギャップコメディの良作。個人的には、語り継がれて欲しい映画のひとつ。生意気な中坊だった僕は、これを観る前には"未開の地の素朴な人々を笑いのネタにしやがって"と、快く思ってはいなかった。でも実際に観て、監督が見せたいものが理解できて、ニカウさんの笑顔と素朴なストーリーでお気に入りになった。

なお「ブッシュマン」は差別的な意味を持つことから、続編公開時にタイトルは「コイサンマン」と改められた。DVDリリース時にこの1作目が「コイサンマン」、続編は「コイサンマン2」とされてリリースされているのでご注意を。
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