黒田隆憲

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめの黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

トップ・オブ・セレブゆえの「虚無」を抱えるソフィア・コッポラならではの作風が、『SOMEWHERE』や『ロスト・イン・トランスレーション』『プリング・リング』『マリー・アントワネット』といった代表作に於いて遺憾無く発揮されていたわけだが、本作では閉ざされた空間で暴かれていく男と女のむき出しの欲望を描き、まさに新境地を切り開いている。

時は南北戦争、人里離れた女子学園に手負いの敵兵(北部兵)がまぎれこみ、最初は「ノブレス・オブルージュ」の精神で手厚く看病していた学園長以下、女教師、女生徒たちのタガが次々に外れていくというストーリー。突然、目の前に現れた「オトコ」に沸き立つ「オンナ」たちの心理を、赤子の手を捻るかのように弄んでいた敵兵コリン・ファレルが、最終的に返り討ちに遭う様はまさにホラー。『ミザリー』とかちょっと思い出しました。原作はトーマス・カリナンの同名小説で、71年にドン・シーゲルがクリント・イーストウッドを主演にオトコ目線で映画化しているらしい。そちらもぜひ観てみたい。

ソフィア・コッポラらしく、衣装やセット、建築、音楽など徹底的に美学が貫かれていてただただ圧巻だし、キャリア17年目にして新たなジャンルへ切り込む姿勢は本当に頭が下がる。にしても、アメリカが南北に分かれて「内戦」していたのって、今から150年ちょっとしか経っていないのね。そのことにも改めて驚きました。劇中歌「ロレーナ」も良かったです。
黒田隆憲

黒田隆憲