本作はディズニーのTVアニメ『キム・ポッシブル』のスペシャル番組で、劇場用作品ではない。以下は、シリーズ全体の感想(シーズン4は未見)。
で、これかなり面白い。他愛ないカートゥーンアニメなんだけど、その強みを生かして、スーパーヒーローやスパイやSF等々のジャンル、ハイスクールを舞台にしたドラマやコメディ、さらには勘違いされた日本文化や忍者、空手、等々のポップカルチャー史をパロディ化しつつマッシュアップして、世界を作り上げている。そこが女主人公ものでも男児にアピールするし、元ネタがわかる大人にも支持されるのも頷ける。
雑な計画で世界征服をたくらむ悪役をキムが毎回やっつけるお約束ストーリーながら、そうしたお約束自体が対象化され、そこからギャグや新たな展開を生み出されていくのも、回を追ううえでの楽しみとなる。自分の乏しい観賞体験からだと、たとえば漫画『うる星やつら』なんかを連想する作り。
キャラクターのバランスもいい。そうした悪役退治と並行してキムの学園生活が描かれるが、そちらだと彼女は苦労が絶えない。等身大の女の子として描くことで、彼女の存在にバランスが取れている。サイドキックとして、親友で助手のロン・ストッパブルがいるが、このトリッキーな相棒はてんで駄目な奴なのに、意外性と強運で活躍を見せる。好対照な2人のバディものとしても面白い。そしてロンのペットの毛がない鼠ルーファスが、見た目のキモさと裏腹にかなり有能。さらにハッキングや秘密道具の開発でサポートしてくれる天才少年であり、精神的にも一番落ち着いているウェイドが、展開があらぬ方向に行かないように安定させている。会話のテンポもいいし、大味でないユーモアもクセになる。作画は和製アニメに見慣れていると感動はないが、キムとシーゴーのアクションは毎回なかなか見応えあり。