モスマンは実在する

普通サイズの怪人のモスマンは実在するのレビュー・感想・評価

普通サイズの怪人(1986年製作の映画)
5.0
定期的に参拝するかたちでみているのだが、まともに感想を書いたことがなかったことを申し訳なく思う。
本作は「電柱小僧の冒険」と「鉄男:THE IRONMAN」の間に撮影されたものだ。本作は(普通サイズの怪人シリーズ)の第一回作品として、ウルトラQなどに出てくるような人間くらいの大きさの怪獣の不気味さを追求するコンセプトのもと作られた。(普通サイズの怪人シリーズ)では本作の他に、トイレの怪人として田口トモロヲさんがトイレの中から出てくるような話も構想されていたという。結局、トイレ怪人は映像化されなかったが、本作の要素を磨き上げたものとして「鉄男:THE IRONMAN」が作られることとなった。本作でも出てくる股間ドリルは、映画祭で上映された際に映画評論家から「あまり血が付いていないのはおかしい」と批判されたという。それを受け、「鉄男:THE IRONMAN」での股間ドリルにはこれでもかというほど血と肉片がつけられた。本作の冒頭でかかる音楽、SPKの「Machine Age Voodoo」
https://m.youtube.com/watch?v=EqwwVDTrUn4はEBM(エレクトリック・ボディ・ミュージック=体のリズム感覚を重視した、比較的明るい雰囲気のインダストリアル)に寄った系統のインダストリアル音楽だ。後に、インダストリアル音楽家の石川忠さんが音楽を担当することにより、こうした要素も限界まで高められることとなる。

「鉄男:THE IRONMAN」の原型としても面白く観ることのできる本作だが、塚本晋也監督の映画は全てが地続きなので、どれが原型でどれがリメイクなどと分けられるものではない。本作も、「鉄男:THE IRONMAN」も、最新作の「斬、」も、どれも同じだ。映画製作その時その時の塚本晋也監督が強靭な流れの中から表れているのが塚本晋也監督作品だ。その意味では、塚本晋也監督はクローネンバーグ監督の映画「ビデオドローム」に登場するブライアン・オブリビオン博士とも近い。この博士はメディア学者のマーシャル・マクルーハンの思想を反映された登場人物だ。ブライアン・オブリビオン博士は自身の人格や人生そのものを映像として記録に残し、自身の新しい価値観に基づく「新人類」として存在し続けている人物だ。博士は自身の発言をビデオに残し、肉体は必要ない人物となっている。自分としては、塚本晋也監督もブライアン・オブリビオン博士のように自分自身=映画となっている人間だと思う。だから、塚本晋也監督作品は全て塚本晋也監督自身の肉体そのもののような感じであり、全てが繋がっている。塚本晋也監督作品を観ると脳が侵される。

最近は、マニアックな映画ばかり取り扱う海外の動画配信サービスArrow videosで塚本晋也監督作品特集が組まれた。それに際して、尊敬する海外のユーチューバーの方々も塚本晋也監督について深い考察を紹介なさっている。どの動画も塚本晋也監督ファンとしては胸アツなのだが、最近だとこの動画が非常に面白かった。
Japanophileさんの動画だ。
https://youtu.be/IS4ubxASgu8
この方の動画はどれも情報量が多く、作品を深掘りしていき、何よりも愛があるので良いです。チャンネル登録をおすすめします。
https://m.youtube.com/channel/UCSQIB5Xn6k06dngwmiwB