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最後の追跡のItottyのレビュー・感想・評価

最後の追跡(2016年製作の映画)
3.8
Filmarksのおかげさまで、とうとう脚本家から映画をチョイスするようになって、なんとなく嬉しい気持ちです。
先月みた年末年始に鑑賞したウインドリバーきっかけで、同じ脚本のテイラーシェリダンの本作に出会いました。


舞台はテキサス。
小さな町で銀行強盗を働く兄弟(クリスパイン、ベンフォスター)。そしてその事件を追いかける引退間近の警官(ジェフブリッジス)。
事件を通じて三人はどこへ行き着くのか。


序盤は事情があって犯罪に手を染める兄弟の姿にフィーチャーしつつも、映画全体の雰囲気を楽しめる、どこか穏やかな展開。
でも老齢ながらも頭の切れるジェフブリッジスの追跡が始まってからは、なぜか犯人側の視点になってドキドキ心配になっている自分が汗
クライマックス以外はアクションはほぼありませんが、主要3人のキャラクターが印象的で余韻が残って、すばらしかったです!


邦題ががっつり日本語だったので、原題を調べると、「hell or high water」でした。(どんな困難な状況でも)「何が何でも」という訳が一番多かったです。
なるほど、映画をみてみるとこちらのタイトルの方が、3人に共通する思いが明確に表されていていいですね。
それぞれが「何がなんでも」成し遂げなければならない、譲れないものを抱えていて、そのゴールに向かって進む姿はすごくカッコ良かった。


また単純な逃走劇に止まらず、いろんなテーマが描かれているところも単純にすごいなと感じました。
ウインドリバーやボーダーラインでもあったような現代アメリカ社会を表した描写。銀行強盗をする兄弟の背景は、貧困の連鎖やそれによる家庭内の悪化、いろいろな問題が含まれているのだろうなと思います。
その上で一番印象に残ったのは、ジェフブリッジスの相棒が語った話にでてきた「奪」という言葉でした。


先住民の土地を奪ってできた町、アメリカ。
学や富のない人から財産を奪う銀行。
どうしようもなく、犯罪に手を染めて金を奪う人。
年齢とともに奪われる立場。

自分の意思だけではどうしようもできず奪われてしまうものは必ずあります。
でも、それを嘆いていてもしょうがない。
まずはそれを受け入れて、もがいて生きていく。
その姿に、自らの意思・信念だけは誰にも奪われない。ということを強く訴えられました。


背中でそれを表現してくれた、主要キャストの方々の演技にも本当に感動する一本です。
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