とくとみろか

西部戦線異状なしのとくとみろかのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1979年製作の映画)
3.7
一言
戦場の日常系映画だからこそ、ラストが重くのしかかる

感想
タイトルがあまりにも有名な本作。1930年版は白黒なので、まだ観やすいこちらを先に観た。
第一次世界大戦中のドイツ。とある青年が、卒業と同時に学校のツレと共に勢い勇んで軍に入隊し、フランス人との戦の真っ最中である西部戦線に配属される。が、そこは思い描いていた戦場ではなかった。次々と死んでいく友達たち。みんなそれぞれに、戦争がなかったらやりたかった夢があったのに。。世話になった古参兵も死に、主人公も死んだ。でもその日の戦況報告は「西部戦線に異状なし」。まさにタイトル通り、その日数多の兵は死んだものの、戦況を揺るがすような異状はなにもなかったのだ。

大前提、全体的に満足なのだけれど、ドイツ人の話にも関わらず全編英語なのが、個人的にはどーーーしても気になって仕方なかった。(フランス人はフランス語を話しているので余計に…)英米合作だから仕方ないんだけどさ、ドイツ人もアメリカ人もイギリス人も、白人は皆同じに見えるから、混乱するんだよ…。

ストーリーは、戦争モノといいつつ結構日常系。塹壕生活ではノミに悩まされるとか、フランス人の女性と遊んだとか、訓練所でいびられるとか(暇つぶしにネズミぶっ殺してたのは笑った)。でもこういう日常系シーンが続くから、それぞれの仲間への愛着も湧くし、「ああ、兵士といえどみんな普通の青年だよね…」とより強く思わされる。そんな、普通に夢を持ち、恋愛をし、青春を謳歌したかった若者が一人二人死んだところで、戦場の日常は変わらない。そう、西部戦線に異状はないのだ。なんて虚しいんだろう。ラストシーン(=タイトル)で虚しさが重くのしかかる。これまでの日常シーンは、すべてラストのための前フリといっていいくらい、ラストが重要な映画だと思った。

特にもやっとしたのは、主人公が怪我の療養休暇で故郷に一時帰省した時。故郷の父は戦場で果敢に戦い祖国に貢献する息子を自慢したいがために友人の飲み会に息子を連れて行く。そこで父と友人たちは「もっと○✕から攻めたほうがいい」「いや、△△から突撃するべきだろう」とか、酒の肴に「ワシの考えた、フランスのすごいやっつけ方」を談義しだす。戦場の現実を知る息子は、父たちの会話を聞きながら遠い目…。突撃すべきとか言うけどさ、それ実際は誰がやると思ってるの?めっちゃ怖いし、いっぱい死ぬんだよ…?と思ってたんだろうな。でもそれを言ったとて、実際に経験していない人にはわからないんだよね。

飲みの場で偉そうに政治を批判するオッサンっていつの時代もいるけど、実際その立場にならないとわからないことっていっぱいあるのにね。本筋とは関係ないけど、そんなことを思ってしまいました。
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