Yoko

ブレードランナー 2049のYokoのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.3
 2049年、カリフォルニア。
見た目は人間と相違ない人造人間「レプリカント」を駆除すべく動くブレードランナーの”K”。
いつものように標的を抹殺すべくレプリカントが住んでいると思われる農場へ向かう…。


 前作『ブレードランナー』については1992年のディレクターズ・カット版(最終版)のみ視聴。
和とデジタルが融合した奇妙な未来をリアルタイムで体験出来なかった私にとっては、続編『2049』をどう受け止めればよいか迷いながらの鑑賞になった。

 今作は前作よりも静謐でシリアスに仕上がっているように思える。
雨、雲、闇、暖色を基調とした照明、特に陰影の使い方については今年観てきた映画の中でも一番上品だったかもしれない。
『ボーダーライン』、『メッセージ』でも披露したヴィルヌーヴ監督お得意(と言っていいはず)の空撮も2049年という近未来の世界を静謐ながらも迫力満載で演出。
ネオンで彩られた街の描写についても前作をリスペクトしつつもふざけすぎずに、今作のシリアス路線を壊さない程度に収めていた。
 さらにヴィルヌーヴ作品として位置づけて観ると、主人公であるKの扱いは『ボーダーライン』の主人公と少し似ていたように思える。
『ボーダー…』のケイトよりもKの方が主人公感は十分に強いが、全編を通して彼の行動を思い返してみると、”ある人物”を主人公として際立たせる働きが強いように「思える」。
「本作の主人公は一体誰なのであろうか?」という点について、私自身も「思える」程度の半端な断定意見しか言えないようになっており、誰なのかは観客に想像に委ねることで確定路線を敷かない作りになっているのが今作のミソであろう。

 とかく、物語については前作よりも深い境地に到達していたのではなかろうか。
「SFアクション」というジャンルを当てはめることはきわめて難しいほどドラマが豊かだった。
 登場人物が発する言葉に謎を示しつつも親切な説明をしていない(意図的であろうが)ために、一見すると展開が分かりづらく結末を目の当たりにして豆鉄砲を食らってしまう人も少なくないと思う。
あわよくば駄作のレッテルを貼られてもおかしくないだろうし、そういう評価のされ方も一理ある。
163分という長尺の作品でありながら詳らかにしないゆえに、万人受けはしにくいかもしれない。
 しかしながら、本筋のK、デッカードの物語自体は非常に分かりやすく、本筋に絡むエッセンスがやや詩的で難解な言葉で構成されているというだけなので要点を押さえておけば戸惑うこともない。
この辺りのエッセンスをいかに読み解くのかという鑑賞後の楽しみはこれからどんどんどんどん膨らんでいくだろうと思うとたまらない。
 
 キャストについては、R・ゴズリングよりも、またH・フォードよりも好演していたシルヴィア・フークスが今作のMVPだった。
ある意味なんでも屋さんである”ラヴ”の役柄に恵まれていたこともあるがとにかく彼女に惚れ惚れ。最高。

 ドンパチアクションを期待していると片透かしする今作ではあるが、彼らの生きざまを描いた今作の物語は深層の域に達していた。
勿論アクションもありながらこれをやってのけたヴィルヌーヴ、続編を作るうえでプレッシャーもあったろうにここまでやるとはすごすぎます!
ズシーーンと心を揺り動かす作品の作り手として、この人はもはや外せないことを確信しました。
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