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ブレードランナー 2049のmidimidiのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.0
163分という長尺を最後まで息もつかせず引っ張る。映像の中の荒廃した未来都市や辺境の描写は視覚的に非常に魅力的だし、人間のアイデンティティとは?魂とは?と突きつけてくるストーリーも、強く今の私たちを揺さぶる。こんなブレードランナーが観たかったんだ、と、嬉しくて震えた。
…というのが、第一印象。しかし、後からちょっと冷静になると、残念な点はいろいろある。
(タイレル社すら滅んだ2049年もプジョーやソニーやコカ・コーラ社は生き延びてる。とか、そーゆーのはご愛嬌だとしても)映画の世界では女性の人格バリエーションが少なすぎる。女性(レプリカント含めて)は娼婦か鬼上司、そうでなければ聖母か無垢な少女。一方、街の広告を彩る立体映像は女性のものばかり。2049年のロスアンゼルスはどうやらハイパー男性社会らしい。作られたばかりの、しかし生殖能力が無い女性レプリカントが即刻殺されるシークエンスには強い暴力性を感じた。ジェンダー意識も大停電を機に退化したのだろうか…と思ってしまうような、男女観、セクシュアリティ観、生殖観の過剰なクラシカルさが、未来の物語としてはどうにも致命的だと思った。
でも、元祖のブレードランナーにもその傾向はあるから、そこを丁寧に踏襲してみたのだろうか。わからない。まあ、そこら辺は大目に見るべきなのか?
最終的には父性愛、または親子愛に話が収束されてしまったところは、感動する人とそうでない人に分かれるんじゃないだろうか。
「この先」のブレードランナーが観たい、と、早くも思う。
あるいは、私たちの現実社会の方がもう既に「その先」を歩いているのかもしれないが。
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