KARIN

ブレードランナー 2049のKARINのネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ホログラムとテクノロジーの美しさと
逆方向に突き刺さってくる悲壮感。

何が悲しいってわけじゃないけど、ラストで静かに涙してしまった…!

「感情を持った機械は奴隷か?」という壮大なテーマが前作から引き継がれていて、終盤までハッキリしない謎にモヤモヤさせられながらも、キレのあるアクションと映像美に魅了されました。

…が、終盤からは、そんな壮大なテーマ自体がカモフラージュだったんじゃない?ってくらい人間臭くなっていきます。世界を変えるような大きな正義よりも、赤の他人の愛を守るほうを選んだ主人公。彼の個人としての人間らしさがどんどん浮き彫りになっていき、たくさん仲間を殺してきた「機械」が1組の親子を守り死んでいく姿はどこか清らかで、救われたようにも見えました。

とくに主人公がレプリカントの反乱軍に出会うシーンは短いながらも印象的。一見正しく思われる大義を唱えて「あなたの味方よ」と誘うヒーローっぽい人たちが登場するけれど
その姿は妙に不気味に描かれている。
「人間らしさ」を掲げるために、人として許されない行為である「人殺し」を行おうとする彼らは正しいのか。
結局自分は何者でもなかった、という絶望を抱えつつもデッカードを守る選択をした主人公により、そんな矛盾と皮肉が強調されます。

「集団としての犠牲をともなう正義」と
「個人として、誰かを守ろうとする小さな正義」
どちらがより人間らしく、どちらが尊いのだろう。
その問いの中で揺れ動く人間と機械たち。

様々な解釈ができるだろうし、他のテーマが隠されているのかもしれないけど、個人的には今作を見ながら頭ではこんなことを考えていました。

観ているとなんか心が澄んできて、ちょっと虚しくもなる。そんな不思議な感覚を味わえる、傑作の素敵な続編でした。
KARIN

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