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ワンダーストラックの一人旅のレビュー・感想・評価

ワンダーストラック(2017年製作の映画)
5.0
トッド・ヘインズ監督作。

1927年と1977年の異なる時代を生きる少年少女の旅を描いたヒューマンドラマ。

アメリカの絵本作家:ブライアン・セルズニックが2011年に発表した同名小説を『エデンより彼方に』『キャロル』の名匠:トッド・ヘインズが映像化した少年少女ドラマの良作で、W主演を務めたオークス・フェグリーとミリセント・シモンズの新鋭子役コンビが異なる時代を生きる二人の主人公を好演しています。

1927年、ニュージャージー州ホーボーケン。両親が離婚し深い孤独の只中にいる耳の聞こえない少女:ローズは、憧れの女優:リリアン・メイヒューが出演する舞台を観に行くため一人ニューヨークへ向かう…。
1977年、ミネソタ州ガンフリント湖。母親を交通事故で亡くし伯母の家に引き取られた少年:ベンは、生まれてから一度も会ったことのない実の父親の痕跡を辿り、ニューヨークにある古書店を目指す…。

上記のように1927年とそれから50年後の1977年を舞台にした少年少女それぞれの旅の顛末を交互に語っていくジュブナイル映画で、1927年→モノクロ、1977年→カラーのように時代によって色遣いを区別した映像が鮮烈に印象的であります。また少女は生まれつき耳が聞こえない上に、少年も落雷によって聴力を失っているので、特に1927年は「サイレント映画」のような手触りになっています。周囲の雑音がシャットアウトされる中、手話や筆談を頼りに他人とコミュニケーションを図る少年少女の姿が映し出されています。

孤独
耳が聞こえない
地元を飛び出しニューヨークを目指す
…異なる時代であっても不思議と幾つかの共通点を持った少年少女が見えない力に導かれるようにして同じ空間に行き着いていく様子と、時代を越えて一時点で交錯していく二人の関係性が運命論的に導き出されていて、ジュブナイル×ファンタジーの融合であった『ヒューゴの不思議な発明』の原作者でもあるブライアン・セルズニックの独創的な作風を再び見出すことができます。

小粒な作品ながら人と人の繋がりを運命的に綴り上げた心温まるジュブナイル映画の良作。『ヒューゴの不思議な発明』のリヨン駅から、今回はアメリカ自然史博物館が物語の鍵となる場所になっています。
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