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ありがとう、トニ・エルドマンのwtnbmghのレビュー・感想・評価

4.5
『お父さんは心配性』やら『オヤジィ』やら『マイ・インターン』やら既存の作品を彷彿とさせるがそれらのどれとも違う。できる娘にちょっかいをかける父親って古臭いコメディタッチでやったらウザくて不快に感じてしまう部分もあるだろうけど俳優さんの演技と演出がドライでちょうどよくて全然見てられた。ハリウッドでリメイクされるらしいけどありもしない日本版を勝手に考えてその壊滅的な出来ばえに勝手に凹んだ笑。数日前のパーティのリストバンドをいつまでも付けてるなんて細かい描写よく思いついたもんだ!
仕事のシーンが多いけど「やっている風」じゃないから、主人公がどういう人間でどんな幼少期を送っていたのかが直接描かれなくても伝わってくる。

親子関係を軸にしているとも取れるし、いわゆるブルシットジョブ屋さんで働くことの良心の葛藤としてもみれる。
父は心配しつつもそんな娘が誇らしいし、娘は父を疎ましく思いながらも根底にある人間性や愛を感じつつ資本主義社会で生き抜かなければいけない。歌や自然や人との結びつきを愛した非合理な前時代と数字やパフォーマンスを第一に合理化を非情にも推し進める現代社会を両天秤にかけるのが父と娘の双方のゆらぎという形で見事に描かれていた。

なおこの作品はベクデルテストをパスする。
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