ありがとう、トニ・エルドマンの作品情報・感想・評価

ありがとう、トニ・エルドマン2016年製作の映画)

Toni Erdmann

上映日:2017年06月24日

製作国:

上映時間:162分

3.8

あらすじ

悪ふざけが大好きな父親ヴィンフリートは、コンサルタント会社で働く娘のイネスとあまり上手くいっていない。たまに会っても、彼女は仕事の電話ばかりしていて、ろくに話すことも出来ない。そんな娘を心配したヴィンフリートは、彼女が働くブカレストを訪れることにする。父の突然の訪問に驚く彼女だったが、何とか数日間一緒に過ごして、父はドイツに帰ることになる。 少しホッとした彼女のもとに、<トニ・エルドマン>とい…

悪ふざけが大好きな父親ヴィンフリートは、コンサルタント会社で働く娘のイネスとあまり上手くいっていない。たまに会っても、彼女は仕事の電話ばかりしていて、ろくに話すことも出来ない。そんな娘を心配したヴィンフリートは、彼女が働くブカレストを訪れることにする。父の突然の訪問に驚く彼女だったが、何とか数日間一緒に過ごして、父はドイツに帰ることになる。 少しホッとした彼女のもとに、<トニ・エルドマン>という別人になった父が現れて…

「ありがとう、トニ・エルドマン」に投稿された感想・評価

なんかもうすごいめんどくさい父親とそのDNA受け継いでる娘だった
KKMX

KKMXの感想・評価

3.9

このレビューはネタバレを含みます

Prankster という言葉がありまして、意味は『悪ふざけ屋』だそうです。どれくらいメジャーな言葉かは不明ですが、偽エチオピア皇帝事件の偉大なるホーレス・コール大先生は英語版wikiにおいて、eccentric prankster と紹介されておりました。現代では、サシャ・バロン・コーエンあたりがこの系譜を継いでいるように感じます。

ヴィンフリートのおっさんはコール師匠のようなキレやスケールはないけど、間違いなくprankster でしょう。悪ふざけをすると、脳内麻薬がドバドバ出て、とんでもなく気持ち良くなるんだと思います。
冒頭の双子コントとか、先生の(自分のか?)お別れ会で生徒たちにコーパスペイントさせるとか、真に無駄で無意味です。これらのエピソードから、彼は気持ちがいいから悪ふざけをしてるだけであり、悪ふざけで何かを訴えるとか風刺するとかが目的ではなく、悪ふざけ自体が目的であることが判ります。
ブカレストを訪れた時は普通のヴィンフリートでしたが、トニ・エルドマンのキャラを閃いた(もしくは持ちネタで、ここでやりたくなった)ので、残って遊んでいたんだと思います。勿論、イネスが心配という面もありますが。
ラストの着ぐるみも、どっかで見つけて「これはヤバい!着ないと死ぬ!」みたいな衝動に従ったんじゃないでしょうか。着ぐるみの頭が抜けなくなるとか、破滅型ロックンローラーのような瞬間瞬間を生きている完全燃焼感がありますね。

幼女時代のイネスは、きっと親父の悪ふざけが好きだったのでしょう。だからヴィンフリートも「本当のところ、イネスは俺の悪ふざけが好きなんだろ〜」とダメな勘違いをしてしつこくやってたのかもしれません。実際、イネスは意外と親父の設定(秘書とか)に乗ってきますし。

ヴィンフリートは遊びやゆとりがまったく無く強迫的に生きているイネスに生きる喜びを感じてほしかったのも真実だと思います。しかし、彼のブカレスト旅行の感想は「マジで楽しかった〜。イネスとも遊べたし、エルドマンはクオリティ高かったぜ、グフフ」くらいのモンでしょう。そんくらいのびのびしていたからこそ、素直に楽しんで素直に愛を伝えるなどのフリーチャイルドな態度がイネスに影響し、結果的に彼女は変われたのだと感じました。
まぁ、石油発掘現場で野○ソしようとしたのはのびのびにもほどがありますがね。あのシーンは「このオッサン、マジでガチだ!」と実に興奮しました。

映画自体はとても丁寧で、グローバル企業の人たちを単純に悪く描写しないなどステレオタイプを排した誠実さもあり、とても複雑で深みのある映画だな、と思いました。ただ、独特の間延び感がありもどかしさは感じましたね。162分はやはり長すぎて少しばかりしんどかった。
イネスの全裸パーティで、上司と秘書が乗ってくれたのが素敵でした。上司なんて一杯ひっかけて覚悟を決めて来てくれているし。秘書の子は本当にイネスを尊敬してるんだなぁと伝わります。いい仕事仲間だね。
ラストも、イネスは地元に帰ってこないのも良心的で押し付けがましくない。たぶん、ブカレスト以降、イネスなりにバランスが取れ充実を感じられるようになったのではないでしょうか。
この時期にほとり座で上映してたんですけど、なんだかんだバタバタしてて日が合わず、絶対見れないと思ってた。でも間に合ったので鑑賞!

公開始まった頃、いろんな人の評価が高めだったので結構期待しちゃったりなんだったりするんですが。
個人的には合いませんでした。

遠い土地で自分の気持ちを押し殺して仕事に生き抜く娘を心配した父親が、彼なりのユーモアで彼女をフォローしようとする。それはとても不器用で、下手くそで、変てこだったけれど、父親の愛こそ真っ直ぐだった。やがて頑なだった娘の心も少しずつ和らいでいく…

あれ?ストーリー読むといい話じゃない?
いや、いい話なんだけどさ。

基本的に『主人公が張り切りすぎて、周囲の迷惑おかまいなしにやりたいことやって大満足』みたいなコメディが苦手なんですねそこでやっぱり思い出すのが〖奇人たちの晩餐会〗とかなんですけど。
この主人公トニも、娘イネスのために知恵を絞って彼女を励まそうとするんですが、それが彼にしか通じないユーモアなわけで、周囲からしたら爆笑どころか失笑なわけで、そういうくだりがどうにもこうにも苦手でした。

全体の流れとしては嫌いじゃないし良いと思う。
親子愛。
機械人間と化するバリキャリへのアイロニー。
ハンガリーの労働社会の実情。
最後にさんざん娘を振り回してきたトニの真意や、振り切れたイネスのとった行動も面白い。

映像も面白かった、基本的に移動ショットなのでリアル感に溢れているのはよかったし、シークエンスのつなぎ目で余韻を残したり、静止本心を見て見ぬ振りして仕事に没頭するイネスを斜めに映していたり、ピントが合わないモブ位置でウロウロしている変なおっさんは惹かれました。

だけど、やっぱり苦手なのはエルドマン化したトニのある意味暴走がどうしても苦手だったのと、それが3時間弱という長さ…この映画が90分レベルのコンパクト映画だったら大満足だったと思います。

登場人物もちょっとどうかな。個人的には、秘書のアンカがいろんな意味で天使である以外、みんな好きになれない、感情移入できない人ばっかりでした。そこも残念。
トニは意味不明だし、イネスは冷徹人間だし(そうなりきれない不安定なバランスも描かれてはいるけど)、ティムはかっこよかったのにホテルとクラブのシーンで完全にドン引き…

苦手映画をpostするのは気が引けたんですけど、不快な人はさらさらっと読み流してくださると嬉しいです。とりあえず誕生日パーティから公園のシーンまでが好き。
オフビートなドイツ版「お父さんは心配症」、ととりあえず言うこともできようか。

背中で雄弁に語らせる演出が素晴らしい。
うざったさとの波打ち際にあるお父さんのギャグも個人的には好み。
あおい

あおいの感想・評価

3.5
お父さんは異常よ!と娘は言うけれど、娘のはっちゃけぶりも相当!

ここまでいくとどちらにも感情移入も難しくて。
お父様のギャグセンスも、日本人には、少し難しくて。でもあのギャグに子供の頃の娘は、大笑いしてたんだろうなと思うと、あの毛むくじゃらのパパとの抱擁に、しんみりする。

娘の顔が、テニスのシュティフィグラフに似てるな〜〜と思いながら観てました。
ゆう

ゆうの感想・評価

3.8

このレビューはネタバレを含みます

入り混じった余韻が残りました。
自然な演技とBGMなどわかり易い演出が無い所は、シンゴジラなど最近のテンポが速い名作と対照的。でもトニエルドマンが現れて雰囲気が一変するところが何とも言えず気持ち良いです。ギャグ自体は不快に感じなくもないバランスですが、この映画の最大のハイライトであるアレにボスが気づくシーンでは映画館内で爆笑が起こってました。
イネスは予想より最初から大人な対応で、父親が自分を思っての行動であることは分かってはいたんだと思いました。それでも生き方への考えの押し付けに拒絶するのは当然ですよね。ましてや離婚して別居した世捨て人のようなオヤジ。最後には父親のぶっ飛んだところを継承して見せてますが、必ずしも生き方を変えたとは言ってないと思います。全部拒絶ではなく更に大人な態度で父親の考え方を認めたのかなと理解しました。その感じが温かいような寂しいような。

個人的にはホイットニーのところは急にあざとく感じてしまったのと、伴奏がどうにも別録音に聴こえてしまって(手の動きも音とズレてるように見えた)冷めてしまい感動はできませんでした。
ルーマニアの現状については愕然とさせられたり勉強になりました。
noel

noelの感想・評価

3.0
義務に追われてると「お前は人間か?」て聞かれるような人生になっちゃうんだなぁ。
人によってはオールタイムベスト級と思える傑作だと思います。娘の年齢以上になると、より感じられるかもしれません。

父娘両方の気持ちが痛いくらいに伝わってきます。娘がヤケクソになったり、普段抑えている感情を一瞬だけ解放したりするのが愛おしい。一人だけのラストシーンがとても良い情感を残します。
個人的に類似する映画としては「マンチェスター・バイ・ザ・シー」や「20th century women」があるのではないかと思う。どこか似てるんだっていうと、戯画化されていない生の人間を描いているということです。そして、この三作は同じような世界の描き方をしていながら、ピントを異にしているために別々のものを描いているという点で自分の中では三位一体を成しています。ただ、前の二作に比べると、ヴィンフリートことエルドマンの取る行動や彼の娘であるイネスが最終的にはっちゃけたときの爆発力は現実的ではないというか、「マンチェスター~」と「20th」とは異なる可笑しみなのです。それなのにまったく作品そのものとの齟齬がなく実在感を伴っているのは、その「現実的」な生活に縛られていることへの映画的飛躍による問いかけであるからにほかなりません。その問いかけにしたって、人間を地に足付いた人間として描かなければ問いかけそのものが成立しえないのです。地に足付いたというのは、つまるところ人間が持っている雑多な複雑さです。

 父親と娘という繋がりから生じるどうしようもない「あーもう、まったく!」といった感じ。様々なニュアンスを含む「あーもう、まったく!」を描くことで、現実を生きているわたしたち観客は共感をするのです。ドイツ人的な感性なのか、カット割が少なく1カットあたりの持続する「間」や手ブレ・どことなくドキュメンタリータッチの撮り方のおかげで、より一層の実在感を映画に持たせています。

 そしてなにより人物に命を吹き込む演技巧者たち、とりわけイネスを演じるザンドラ・ヒュラーの顔のニュアンスが凄まじい。父親といるときの顔が含む多種多様な感情の渦をセリフなしに表現してみせてくれます。

 中盤以降はほとんど親子ゲンカの様相を呈しているようなお互いの主張のぶつけあい。そして、父親に触れ最終的にイネスが取る行動を見れば「血は争えない」と誰もがいうことでしょう。

 笑えるのに笑えない、この複雑怪奇さこそこの映画の真骨頂なのかもしれない。

このレビューはネタバレを含みます

最大級にブッ飛んでいた。裸のパーティーのシーンだけでこの点数。笑った。
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