CHEBUNBUN

垂直のままのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

垂直のまま(2016年製作の映画)
3.3
【ギロディの国のアリス】
『キング・オブ・エスケープ』『湖の見知らぬ男』と強烈なゲイゲイしい描写に局部クローズアップから愛の深淵を魅せつける作家性で、カイエ・ドゥ・シネマから贔屓されている鬼才アラン・ギロディ。

日本では映倫治外法権のアンスティチュ・フランセでしか観ることのできない作品。春に行われた特集上映に行けなかったのでDVDで観てみた。

カイエ・ドゥ・シネマベストテン2016に選ばれているだけに奇天烈な作品だった。

『不思議の国のアリス』のアレンジに作家の苦悩ものと、単体ではありきたりなネタを、アラン・ギロディは抜群のカメラワークと混沌の融合で映画の新境地を開拓している。流石はタイトルからして『RESTER VERTICAL(垂直のまま)』。ナニが垂直なのかな〜?と煽っているだけある。

さて、この手のシュールな映画は闇雲に不条理を描いても観客の心は掴めない。カオスな中から、観客にヒントを与え、そして映画のカオスから現実社会のある側面にハッと気づかせる作品である必要がある。

本作は、まずクリエイティブとは何かを気づかせてくれる。脚本が書けない男は、彷徨いネタを探す。美青年に「オーディション出ない?」と誘うが、断られ、ホームレスに取材しようとするが特ダネには繋がらない。そして、草原の女と恋に落ち合体したことから地に堕ちていく。シュールで常軌を逸したネタにも関わらず脚本を書こうとしない男から、クリエイティブとは意識すること、メタ的に考えることが重要だと分かる。

男が、性と不条理の旅を通じて、男女、年齢の壁を越えていくのにそれに気づけない様子を観ると、物事を多角的に観るようにしなきゃと思わずにはいられない。

なんだか、ビジネス書のレビューみたいになってしまったが、実のところ強烈な「垂直」と赤ちゃん爆誕、そしてピンクフロイドに溺れるチン作でしたw
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