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アクエリアスのERIのレビュー・感想・評価

アクエリアス(2016年製作の映画)
3.9
「バクラウ」の監督の前作「アクエリアス」がNetflixにあるうちに、長いけどお休みだし観ちゃおうということで、観てみたらめちゃ好みでした。ブラジルらしく(?)性の奔放なシーンはあるものの(急にびっくりする)なんか地続きなのも含めてよい。笑

うまい監督ってやっぱり冒頭の入り方(世界観の作り方)のセンスがたまらない。この監督のとる世界の切り取り方がとても心地よくて、ブラジルという国もたぶんとても好きなんだとおもうけど、都市と自然のバランスとか、引きの構図とか、場面展開とかめちゃ好きだ。

過去のショートフィルムとかも全部みたい。(どうやったら観れるかなぁ)と想いを馳せつつ「アクエリアス」の世界に入り込む。

第一部。クララの髪。
QueenのAnother One Bites The Dustが車から流れて豊かな時間。服や靴、おうちに置いてある家具が何もかも可愛い。クララは乳がんとなって髪が短くなった。副作用の影響で。3人の子供には明かさず病気を乗り越えて。

一人暮らしとなったクララが暮らす部屋のセンスが最高によくて、あんな部屋にしたいなぁと影響される。おばあちゃんの70歳のお誕生日に、家族、親戚らが集まってみんなでお祝い。とにかくおばあちゃんが美しい。30年パートナーだったオーガストは既婚者で6年前に亡くなったけど、彼をずっと愛していた。とみんなの前で告白をして。

クララは取材を受けていた。Double FantasyのLPを取り出して1980年に起きたジョンレノンの暗殺直前に載った記事について話す。中古店で勝ったこのLPが特別にものになった。デジタル音楽はボトルに入れた手紙と同じ。音楽やたくさんの本、映画のポスターが壁に貼られ、ハンモックで眠る。クララの片方の胸に手術の跡。彼女の生活は申し分のない豊かなものだった。そんな彼女の元に、男3人がやってきた。不動産屋の男だ。私の部屋は売り出していない。そう伝えてもいい話があるとしつこく迫る。「アクエリアス」というプロジェクト。ビンテージの誰も住んでいないアパートに住むクララに、立ち退きを求める。

第二部。クララの愛。
生活には音楽があって、この上ない。女性たちの宴。大人な会話に、生涯現役感があって楽しそう。お目当ての男性からクララが誘われたときの友達の反応が最高すぎる。急に静かになる淑女たち。可愛い。素敵だなと思った男性と良い感じになってもそれ以上進めなかったのは。そんな少し寂しさを抱えた夜にクララはレコードをかけて部屋で踊る。

クララの息子たちは、時々彼女に会いに来る。娘たちは、ボア・ビアジョンが見渡せる部屋で育ったけど、一人アパートに残るクララに部屋を売ることを考えてみては?と提案する。親子は言い合いになり、わかり合えない。夫に先立たれ、息子や娘たちが抱える問題もあるけれど、クララはクララで生きていかなければならない。そんな心が埋まらない夜は、QueenのFat Bottomed Girlsをレコードで流しワインを飲む。

第三部。クララのガン。
彼女が頑固に立ち退かない姿勢を見せていると不動産会社は卑怯な手を使ってくる。彼女が部屋を出たくなるように手を変え品を変えだ。

30年前にガンを克服したクララは、こんなことでは屈しない。ルシアおばあちゃんから受け継いだ人生を楽しむ人生観を簡単に捨てたりはしない。

それにしても不動産会社の横暴ぶり。なんなんだ
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