アラシサン弐

わたしは、ダニエル・ブレイクのアラシサン弐のレビュー・感想・評価

4.0
隣人と手を取り合うことは人間として実は当たり前のことなのに、効率化されて淡々と歯車を回させる現代社会では、そうした生き方は黙殺されて虐げられることへのやるせなさを感じる。

人を生かす為の制度がデジタル化され、複雑に枝分かれされたシステムに適応できない人々が人間扱いされなくなってしまう社会の矛盾さを描きつつも、逆説的に、そんな不条理の中でも互いに助け合って生きることで生まれる人間としての尊厳は消されなことを描いていると思う。

コロナで休業させられた経営者が、寄付金の要請がムズすぎて挫折してしまう現象みたいに、過度に複雑化されていく世の中で、アナログに取り残された人々が声を挙げられなずに頓挫してしまうのは実際に起きている。
こういう描写を年齢を重ねた監督が描くのは説得力が有る。

あと、ちゃんとヒューマニズムの汚いところも描いている。
PCが使えなくても隣の若者は教えてくれるし、フードバンクの職員も優しい。
けど無知だと思って近づいてくる奴もいるし、漬け込んで売春の斡旋をしてくる奴もいる。

助け合いの中で近づいてくる理不尽さも誤魔化さずに描いていることにより深みがある。
アラシサン弐

アラシサン弐