ぽんすけ

わたしは、ダニエル・ブレイクのぽんすけのレビュー・感想・評価

4.3
ケン・ローチは好きな監督の一人。リアル志向の映画が好きなので、労働者階級のリアルを描き続ける巨匠ケン・ローチは、イギリス映画界の中ではマイク・リーと並んで、まさにドンピシャの存在。比較で言うと、かなりシリアスかつ辛辣で暗いことが多いマイク・リーに対して、ケン・ローチは作品によってだがややコミカルな演出もするところが、違いだろうか?

この映画は、わりとウェットに転んでいたように思う。長回しで撮られる、空腹に耐えかねて缶詰を貪るシーンは衝撃的だった。コミカル面は主人公のダニエル・ブレイクが担い、暗い絶望一辺倒にはさせない。マウスをPC画面に当てるとかね。相変わらずの熟練の名作であった。


ただ、今回は基調がウェットなせいか、どうしてもカタルシスが欲しくなってしまった。リアルな描写なんだから、安易な感動を誘うようなカタルシスはないのは承知のうえで、スプレーによる反抗以上のモノが観たくなっていたのも正直なところ。ケン・ローチが好きでも、マイベスト的なこの作品がないのは(強いて言えば「スウィート・シックスティーン」かな?)、リアリティのある映画が好きでも、私はどこか映画に幸せなフィクションを求めているのかなと感じました。
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