亘さん

ラビング 愛という名前のふたりの亘さんのレビュー・感想・評価

4.0
1958年、バージニア州で結婚した男女が10年間その権利を求めた裁判の実話・・・というと物凄く地味で退屈そうな話なんだけど、こんなに心のこもった映画はない。今まで見たどんなラブストーリーよりも強い愛情のある映画だった。

1958年、白人のリチャードと黒人のミルドレットは結婚した。当時バージニア州では異人種間の結婚が法律で禁止されていた。それを知っていたリチャードは合法のワシントンDCまで出向き、ミルドレットの父親立会いの下結婚する。ところがバージニア州に戻って暫くすると密告により二人とも逮捕されてしまう。やがて釈放されるが、条件は「同州に同時に存在しない事。若しくは25年間同州に二人で入らない事」だった。二人は有罪を認めてワシントンDCに引っ越す。しかし故郷への思いを断ち切れないミルドレットが司法長官に手紙を書いたことで事態が変わる。

1960年代はベトナム戦争が激化して黒人による公民権運動が活発だった。この司法長官というのは実はジョン・F・ケネディの実の弟のロバート・ケネディ。リベラル派のケネディがミルドレットの手紙を読んで人権団体に救済を求めたのは本当に奇跡だっただろうと思う。

それまで黒人と白人が結婚する事は州によって法の判断が違っていて、最高裁判で覆ったのは画期的な出来事なのに、本作では誰かが感情的になることは一切ない。弁護士と判事が裁判で言い合うシーンも無ければ、主人公達が自分達の権利を求めて泣き叫ぶこともない。
リチャードはいわゆるレッドネックで、黒人と同じ環境で育ち友達も黒人しかいないし、白人だという事に優越感は全く無い。むしろ捨て犬のようにオロオロして上目遣いで人を見ている。妻のミルドレットも小鳥のように小さくて優しくて自己主張をするタイプの女性ではない。この夫婦、あまり会話もなくリチャードは「夕飯までには帰るよ」という言葉だけ。それでも、自然に寄り添ってソファで寝転がる写真はとても幸せそうだ。
得に感情的な言葉もないのにこの二人の愛情の強さが伝わってくる。ロチャードの「君を守るよ」という言葉が精一杯。何よりも心強い言葉だった。
後でわかったけど、ミルドレットのルーツはアメリカ先住民族の血が入ってるとか。それなら純粋なアメリカ人なのでは?と思うけど「先祖に1人でも黒人が居たらそれは黒人」になってしまう「血の掟」があったとか。そんな理不尽な法律が2000年までアラバマ州であったことにビックリした。
この映画見るまで結婚て書類や法的なもんだけでしょって軽く考えてた部分があったのを再認識した。結婚は人権の一つで、それはとても尊ぶべきものだ。当たり前だと思っていることは、先人たちが苦労して作ってきたものだと感謝をしなければならない。そのことを忘れないようにしようと思う。

補足:リチャードの前腕上部がすごい太いんで俳優誰だろう?と思ったら『ギフト』のジョエル・エドガートンでエンドロール見るまで全く気づきませんでしたw
亘さん

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