にさ

お嬢さんのにさのレビュー・感想・評価

お嬢さん(2016年製作の映画)
4.2
飛躍を忘れる鳥はいない。
例え、鳥籠で育った小鳥であったとしても。


3つの視点が織りなす復讐三章。
彼女が選んだのは強制的肉欲ではなく、純粋無垢な自由だった。

上記が原因で若干長く感じてしまうが、退屈を覚えることはないだろう。眩いまでの官能的サスペンスに、あなたは目を離すことはできないから。

秀子が屋敷の石垣を越えられず、珠子がキャリーケースで階段を作るシーンがある。珠子が越えてみせたように、それはさほど高い壁ではなかった。しかし、秀子にとっては渓谷よりも深い壁であり、ベルリンの壁を彷彿させた。

ノミのジャンプ実験を知っているだろうか。
通常であれば2mの高さまでジャンプすることができるノミに、高さ50cmほどの箱を被せるとどうなるか。ノミは天井を破ろうと努力するが、何度挑戦しても失敗に終わってしまい、自分の限界を定めてしまう。恐ろしいことに、箱という物理的限界を取っ払っても、50cm以上飛ぶことはない。
打開策がひとつだけある。それは50cm以上飛ぶことのできる仲間の姿を見せてあげるのだ。その勇姿に、やっと心理的限界が取り払われる。

秀子はこれから別の人に恋をするかもしれない。秀子が珠子に惹かれたわけは、自分の人生を壊しにきた初めての救世主であったから。彼女はこれからたくさんの人に出会うだろう。たとえ、千を超える誰かに出会ったとしても、珠子のことを忘れることはきっとない。あの時、道を敷いてくれたのは、唯一珠子だけだったから。初めて、勇気というものを教えてくれた人だから。



「バージンロードを夫と歩く娘をそっと見守りたい母も多いのよ」 ミステリと言う勿れ
石垣のシーンでこのセリフを思い出した。全然関係ないんやけど、忘れちゃいけない気がするので、備忘録として残しておきます。
にさ

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