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シエラネバダのicedoneのネタバレレビュー・内容・結末

シエラネバダ(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

みたひ: 240318

とても興味深かったです。生存してきた時代の背景や思想も、そして当然ながら「性格」も全く異なる登場人物たちの口論や往来が常に執拗に長く廊下から映されていて、ここは正に交差点だと感じました。音響に関して付け加えるなら、防音性能の高いドアやそうでないドア、そしてそれらが開けられているか閉められているかによる反響の異なり、流れてくる背景音楽、着信音の異なりと、実に多様な印象であったのは驚きました。ミキシングに想像もつかない工夫がされていたのか、そもそも多様な音響を生み出すような構造の家が選定されていたのかは分かりませんが、どちらにせよ非常に有効であるように感じました。大掛かりな舞台装置がなくとも——というよりおそらくそれがないように見せかけられている状態でも——インターセクショナリティは避け難く存在するということが常に提示されていたように思いました。矢継ぎ早にドアが開け閉めされることも、カットアップのようですらある印象でした。そう思うと、ラストまで招かれざる、法要であれば尚更いてほしくないであろう外部から突如やってきた人物の健康状態が物語とは全く別軸で進行していたのも興味深かったです。というか台本はどうなっていたのでしょうか…会話が自然すぎて見ながら常にびっくりしていました。トニーが「喫煙室」(正確にはキッチンでしたが)に迎え入れられるシーンでのホモソーシャル性にうっっってなるくらいリアルでした。登場人物の服装も多様で面白かったです。
細かな差異とその氾濫を見ているうちに突如開始されるラリーが外に出るだけのカットがそれだけで強烈だったのが印象的でした。駐車のくだりの後(私が感じた限りでは唯一の)固定カメラによって車を後ろから切り取ったのがあまりに映画的な画面に見えて個人的には衝撃です。これが映画だったことを思い出したような、言い訳のためだけのカットにすら感じました。
ご飯を食べるまでがあまりに長かったため、この人たちはご飯を食べられるのか…!?それとも食べられないのか…!?(T-T)という味わったことのない緊迫感がありました。無事に食べれてよかった。最後大爆笑で終わりなのも、物語の終了というよりは会話の延期で、これも有効な態度であると感じました。
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