odyss

セールスマンのodyssのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
3.5
【イランの現在】

近年国際的に高く評価され、日本でもすでに何本か作品が公開されているイランのファルハディ監督の最新作。

舞台はイランの都会。最初、主人公夫妻(シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥスティ)の住んでいたビルが倒壊の恐れがあるというので避難するシーンから始まる。ちょっとびっくりする出だしだが、このビルがラスト近くで重要な役割を果たす。

主人公夫妻は別のビルに引っ越すのだが、そこには前の住人の荷物が一室に残っていた。さらに、前の住人を訪ねてきたらしい男が、偶然室内に入り込んで、浴室でたまたまシャワーを浴びていた妻と鉢合わせし・・・

ふとしたきっかけから夫婦の仲が微妙になっていく様子が丹念に描き出されている。

イランというと日本からは遠い国だし馴染みもあまりないけれど、少なくともこの映画を見る限りは都会での暮らしは欧米先進国や日本と変わりなく、また主人公夫妻の夫は教師でインテリであり、妻も交えてアーサー・ミラーの『セールスマンの死』を舞台にかけているなど、芸術活動にいそしんでいる。そうしたイランの日常の様子なども興味深い。
odyss

odyss