ブタブタ

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

『IT:CHAPTER1』
2017年
監督:アンディ・ムスキエティ
撮影:ニコラス・ローグ(嘘)

『赤い影』の水の都ベニスと『IT』のアメリカ郊外の架空の田舎町デリー。
町の歴史や、そこにある呪いと町自体が何か不吉で邪悪なモノに満ちている不安感。
そして起きる連続殺人(失踪)事件。
赤い風船と赤いコート。
赤いコートの小人(奇形)の殺人鬼も道化師ペニーワイズと同じく「向こう側」から来た存在かも知れない。

何て意味不明な妄想オープニングを入れるほど、もうとにかく好きすぎてどうにもならない世界。
自分が子供の頃を思い返すと友達もなく(実際はいたかも知れないけど思い出せない)つまらない日々とそこから何処か遠くに行きたい、空想と妄想と満ちた思い出の中にあるのは正にこんな世界。

『ストレンジャーシングス』監督・脚本のダファー兄弟は『IT』の映画化を熱望するも果たせず『ストレンジャーシングス』の企画を何社にも持ち込んでついにNetflixで実現したとか。
『ストレンジャー・シングス』シーズン1・2を見終わりあらためて本作『IT』を見ると、その共通点の多さ、同じ世界観、『ストレンジャー・シングス』は例えるなら『死霊のはらわた』を予算を掛けてスケールアップリメイクした『死霊のはらわた2』みたいな『IT』のスケールアップリメイク&様々な作家・作品のオマージュに満ちていて、今回の『IT』は『死霊のはらわた』1作目をそのまま最新技術で持ってフルバージョンアップした『死霊のはらわた』リメイクとでも言いますか(またよく解らない例え)

原作の時代設定は
子供=50年代、大人=80年代
今回の映画は
子供=80年代、大人=2010年代
となっており、より80年代のノスタルジーに溢れていて舞台設定も奇しくも『ストレンジャー・シングス』と同じ、アメリカ郊外の街での少年達と正体不明の敵との戦い、きわめて質の高いスリラー・ホラー・ジュブナイルでこの二作品は時空を超えた「双子」の様な関係にあり実は同じ世界の出来事かも?などと言う楽しい妄想も出来て同じ年に『ストレンジャー・シングス(S2)』と『IT』が公開され、そして両方とも大ヒットした事はある意味奇跡です。

ここよりITの正体、原作ネタバレに触れておりますので原作未読の方はご注意ください。








本作はR指定ですが90年制作のドラマ版と同じく「完全映像化」とは行きませんでした。
ペニーワイズとの井戸の家の地下での最終決戦。
ペニーワイズが正体である蜘蛛型エイリアンに変身しルーザーズクラブの少年達を追い詰める場面でべバリーがとった驚くべき行動。
子供にしか知覚出来ないペニーワイズを撃退するには大人になればいい。
そこでべバリーは皆が一つになる「チュードの儀式」として「全員とセックスする→大人になる」事を決断し皆を救う。
これはさすがにX指定にしても描くのは不可能でしょう。
楳図かずお『漂流教室』の「怪虫編」でサソリの様な巨大怪虫が実は妄想癖のある少年の精神から生まれたもので主人公はこの少年を殺す(と思わせる)事により消滅させる―と言う話しがあって、ペニーワイズの正体についても色んな考察がされてますが(前記した「蜘蛛型エイリアンもそう書いてあるだけで“真実ではない”」)ペニーワイズは単純にエイリアンだとか思春期の少年少女が生んだ邪悪な何かとかでなく、それらを全て含めた巨大な宇宙悪みたいなもので、それは何処にでも存在する、日本で言えば妖怪とか何か意味不明な理解出来ない不可思議な事が起きると全部妖怪の仕業とされる、京極夏彦の『百鬼夜行シリーズ』が描いてる世界と似ていて『IT』はキリスト教文化圏の世界観宗教感、神に対する悪魔、翻って『百鬼夜行シリーズ』は日本の妖怪で、ペニーワイズは全ての妖怪を合わせたみたいな存在なんだと思います。
なので永遠に不滅ですし、何度も現れる。
あのピエロ(クラウン)の怪物が本当にいるのかも知れないし、ピエロの格好をした人間が子供を殺してるのかも知れないし、或いは子供達が消えるのはそれぞれ全部別々の理由で、家出とか自殺とか誘拐とかがあの街で偶然重なっててそれらを子供達が何か邪悪なモノの仕業と考える事でペニーワイズと言う実際は存在しない怪物を作り出してしまったのか、しかしそれらを全部含めて「本当に存在する」のがペニーワイズなんでしょう。

蜘蛛型エイリアンへの変身をやらなかったのはまだ『IT CHAPTER2』がありますしペニーワイズの正体については全く触れなかったのは本作が「続く」だからでしょう。

スティーブン・キング原作映画化として『キャリー』『シャイニング』と並ぶ傑作だと思います。
映像も70年代の映画を意識して再現してる様に見えましたし、それと80年代ブームだったスプラッター映画ばりの気合いの入ったゴア描写も意外でした。

次は27年後、現代が舞台となる『IT CHAPTER2』が楽しみです。
ブタブタ

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