そーた

LOGAN ローガンのそーたのレビュー・感想・評価

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)
4.0
最後の爪痕

今年はもうエピソード8だけを見れればもうそれでいいやと思いつつ、
やはり話題作が目白押しなもんでついつい寄り道をしてしまっております。

またもやこんな力作に出会えるとは、
人生ほんとに捨てたもんじゃありません。

ヒュー・ジャックマン演じる最後のウルヴァリン。
 
老いさらばえるローガンのリアリティーに対して粗相なきバイオレンス描写が光るマーベルの底力。

謎の少女ローラを守るために、
ずたぼろになりながらも闘い抜くローガンの勇姿に目頭を熱くする異色のロードムービーです。

ミュータントの逃避行がこうも面白いものに仕上がるとは。

オープニングで荒々しく暴れまわるローガンが身を呈して自分の車を守るシーンで、
この映画の完成度の高さを思わず確信してしまいました。

そして、冒頭から堪能できるR15の名に恥じない見事な残虐描写はミュータントの世界にこそ実は相応しい。

だって、あんな爪でざく切りにされればひとたまりもないでしょ。

今までシリーズの中で押さえ付けられていたバイオレンスが縦横無尽に駆け巡る。

僕にはそれが、
ローガンやチャールズが抱える業だったり、
互いに痛みを分かち合おうとするローラとローガンの絆だったりと、
それがただの暴力とは写りがたくて、
彼らのひと刺し、ひとなぎごとに彼らの、いや、
ミュータント全員が抱いている複雑な感情が激しく弾けていくような気がしてなりませんでした。

ヒーローのコスチュームに身を包むことなく、周りの人間に同化するようないたって普通の服装が、
ミュータントとしての宿命を却って際立たせていたようにも感じてしまいます。

そんな出来うる限りの現実感を演出する手法は、
DCコミックが『ダークナイト』などで先んじて行っていたもので、
その点で言えばマーベルは先手を取られた印象。

ただ、この映画で光るマーベルの新たな試みが、
ヒーロー映画にロードムービーというスタイルを導入したことだと思います。

それが、ミュータントに課せられた終わりなき苦難の道を暗示しつつ、
同時に人間ドラマを育む下地となっている。

一期一会な出会いからの晩餐シーンなんか、
マーベル映画とは到底思えないくらい人間味に溢れてて、
僕にはあのシーンが最後まで後を引いてしまい、
ラストは何とも言えない気持ちになってしまいました。

愛するひとがいて居場所がある。
これが普通の人生だ。
君は経験すべきだ。

プロフェッサーXことチャールズのこんなセリフは、
過去の仲間達を去来させ、哀愁を帯びそして暖かい。

その言葉をしかと受けローガンは最後の闘いへ。

残念ながら、
ローガンの最後を盛大に見ようとビールを飲んで映画館に行ってしまったことが災いし、
ローガンが懸命に闘っている中で僕は尿意と闘う始末。

晩餐シーンの余韻を味わいながら最後に大いに泣きたかっただけに悔いが残る。

まぁ、そんな事よりもとにかく、
この革新的野心に満ち満ちた異色作はマーベル渾身の底力。

今後も続くシリーズの発展が楽しみで仕方ありません。

ヒュー・ジャックマンにパトリック・スチュアート。
長い間本当にお疲れ様でした。

そういえば、ローガンは珍しくウィスキーを飲んでいたよな。

ウィスキーの方が利尿作用が少ないっていうし、
次はビールじゃなくウィスキーにしよう。
そーた

そーた