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ハクソー・リッジのbeatdjamのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.5
崇高な理念を持ち、銃を手にすることを選ばず、ただ戦場で人を救い続けた兵士を、実話を元にしたフィクションとして描く映画。
本人の信念や気持ちはそのままであるものの、戦闘の経過や経緯、描写などはフィクションとして脚色されている点注意。

事前に聞いていた話と違わず、プライベートライアンを彷彿とさせるような、凄惨で、狂気にまみれた戦場描写を行っていた。
ただし、敵は日本兵であり、主人公たち米兵に感情移入しながら見つつも、日本人が殺されていくのを見るのは複雑な気持ちではあった。

戦時国際法で守られているはずの衛生兵だが、その立場がありながらも戦闘中の流れ弾や、それに見せかけた故意の銃弾で狙われることも多々あったと言われる。
そういった存在ですら撃たれるような戦場に向かう中で、兵士たちからすれば武器を持たない味方というのは恐ろしいし、頼りにならない。そう思わせるに十分な環境だった。
自分が同僚であっても、武器を取れと責めていると思う。
しかし、ドスは武器を手に取らず、医療器具だけを持って戦場に飛び込んだ。
恐ろしい戦場を駆け巡り、ただ人を救い続けて、その信念を他者に認めさせ、称賛された。

守るべきものたちのために銃を取るという事よりも、殺さないことを是とするという宗教的価値観は正直理解しきれなくて、キリスト教圏の人間であればまた違う感想を持ったのかなと思う。

思うに、戦時中は多くの人が強固な信念を持って、人を殺していたと思う。その信念に優劣は無いし、自分が守るべき誰かのために、誰かを手にかける事があの状況で非難に値するかと言われればそういうわけではない。
しかし、マイノリティとしての存在が声を上げ、認められ、受け入れられる実例を作ったという点で偉大な人物だったんだなぁと感じた。

個人的には父親が『伍長』と呼ばれるシーンが非常にお気に入り。
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