きりとし

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーのきりとしのレビュー・感想・評価

4.0
「ライ麦畑の反逆児」
2019年はサリンジャーの生誕100周年の節目ということで「ライ麦畑で出会ったら」を含めてサリンジャー関連作品が多い。
今作は「ライ麦畑でつかまえて」を執筆するまでとその後を描くサリンジャー自身の伝記映画。
小説家希望は家族に応援されず、処女作が出るまで長い下積みがあったり、婚約相手をチャップリンに取られたりと、そもそも厭世的で世の中に漠然とした憤りを持っていたサリンジャーが、より一層世の中に対して鬱憤を貯めていってる様は正直気の毒でさえあった。婚約相手をチャップリンに取られるってパワーエピソードすぎる笑
その鬱憤の発露が「ライ麦畑でつかまえて」であり、当時の米国の若者の心を捉えて放さないのは、その時代の若者特有の不安や衝動を初めてドンピシャに描写できた小説だったんだろうなと思う。みんなサリンジャーと同じように言葉にできない苦しみを抱えていたみたいだ。だからこそ主人公のホールデンにみんな自己投影をしたのだろう。まあ読んでないから詳しくはわかんないんだけど。

ニコラス・ホルトは厭世的で鋭さと繊細さを合わせた気質のサリンジャーをうまく表現できてたし、何よりやっぱりサリンジャーの師匠であるウィットを演じたケヴィン・スペイシーが良かった。
「ラスベガスをぶっつぶせ」、「ベイビー・ドライバー」、「ミリオネア・ボーイズ・クラブ」などなど、ケヴィン・スペイシーのメンター役は全部めちゃくちゃいい。
サリンジャーの父親役のヴィクター・ガーヴァー、エージェント役のいつもなにかしら出てる働き過ぎのサラ・ポールセンなど、脇を固めるキャストも良かった。
サリンジャーの奥さん役がルーシー・ボイントンだったので驚いた。報われない奥さん役が多いですね・・・

とにかく次は原作の「ライ麦畑でつかまえて」を読みたい。
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