きりとし

喜望峰の風に乗せてのきりとしのレビュー・感想・評価

喜望峰の風に乗せて(2018年製作の映画)
3.0
「喜望峰の風に乗せて」

「博士と彼女のセオリー」のジェームズ・マーシュ監督×コリン・ファース主演で実話を映画化ということで地味に期待してたんだけど、ストーリー自体にほとんど共感も興奮も感動もできなくて、ひたすら“平らな”映画だった・・・

家計のために、そして自身の夢のために、素人ながら単独無寄港世界一周レースに参加した主人公ドナルドとかいう事実がまず衝撃的すぎる、本当に誰が見ても自殺行為だろ、落ち着けって言いたい。頭冷やせ。

レース用のヨットを所有していないドナルドの挑戦に、スポンサーが名乗りを上げて、なんとかレースの出場にはこぎつけるものの、素人の設計の船では当然まともな航行はできず、そもそも造船自体がずさんだったりと、もう開始直後からの“詰み”感が異常。初期装備で魔王に挑んでる感。

んで、そのスポンサーからのお金とリタイアのジレンマや加熱するマスコミの報道と残した家族と自分の命を天秤にかけて、ドナルドはどんどん追い詰められていく・・・

って、これもうバカすぎないかさすがに。行く前からわかるやん、そんなん。
素人の自信ってホント怖いわ、海ナメすぎ。自分はヨットをやってた事があるから、劇中リアルに「そんな装備で大丈夫か!?」状態になりまくった笑

自分の夢と過度に加熱したマスコミの報道と自然の過酷さと、とかそこら辺をいい感じに描きたかったんだろうけど全部何も響かなかった。多分、自然の過酷さだけにでもフォーカスして「パーフェクトストーム」っぽくしてくれた方がまだ良かった。

けど、コリン・ファースはさすがの演技で、“平らな”ストーリーの中でも抜群だった。特に洋上での追い詰められて全てをさらけ出したような孤独感とか悲壮感は素晴らしい。スーツ姿の真摯なイメージが強いので新鮮だった。
レイチェル・ワイズも良き。

ルーピン先生役でお馴染みのデイヴィッド・シューリスは、やっぱり悪役というかヒール役の方が上手いと思う、「ワンダーウーマン」とかもそうだし。

あとは、‪序盤のシーンでこの2人がちょい役で出てたのには驚いた。‬
‪「シャーロック」シリーズのマイクロフト役でお馴染みのマーク・ゲイティス‬
‪「ミッション・インポッシブル」のアトリー役がうざかったサイモン・マクバーニー‬

サイモン・マクバーニーとかもっと見たかったわ、マジのちょい役でびびった。

音楽がヨハン・ヨハンソンらしいんだけど、自分は特段良さも分からなかった、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の映画での仕事がダントツでバッチリハマりすぎてるのかもしれない。

所々、「博士と彼女のセオリー」を彷彿とさせるようなホームビデオの演出とか温かみのある家族のシーンの挿入とかの演出は良かったので、やっぱりそもそもの題材にしたストーリー自体が映画にするには微妙だったと思う・・・

原題の“THE MERCY”も映画の最後で意味は明らかになってくるけど、感情移入ができなさすぎて、ちょっと説得力というか理解に苦しんだ・・・
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